モデル選択以前の問題が大きい!?
実際にはモデル選択以前の問題が大きい!?
プレーを見なくてもわかるのはなぜ!?
ラケットドックに参加される方のラケットを店で事前チェックするとき、「このラケットだと、こんなことが起きませんか?」とこちらから伺うことがあります。
まだプレーを見たこともないのに、です。
多くの場合、「そっ、そうですね」という答えが返ってくるのですが、ということは、プレーを見なくても、そのラケットの状態が不適切であることが、ある程度わかってしまうということです。
モデル自体の性能が合っているかどうかは、プレーを見てからでなければ判断できないので、見ないうちにそんなことを言うのはおかしいのですが、そのタネ明かしはこうです。
モデル選択以前の問題として、ラケットが使いやすい状態から大きく外れている場合は、そのせいでどんなことが起きるかが容易に想像がつくのです。
スイングウェイトが軽すぎたり重すぎたり、あるいは、ストリングが硬すぎたりというときに、プレイヤーの動きにどういう症状が出るかは、ラケットドックの現場で数多くの症例を見てきているので、その経験から推測できるわけです。
でも、使っている本人は、ラケットのせいで被害を受けているなどとは想定していません。
「ラケットにはスイングウェイトという数値があって、その数値の個体差でラケットの性能が変わる」ということや、「フレームに書いてある適正テンションの数値を参考にしてはいけない」などということは、世間一般の常識ではないため、そうしたことが原因で、ラケットが使用に適さない状態になるなどとは、普通は考えないわけです。
スイングウェイトが軽すぎる
現在市場に出回っているラケットで、スイングウェイトの値が通常の使用に適さないと判断される個体は相当数あるのですが、内容的には、重すぎて不適切なケースより、軽すぎるケースのほうが圧倒的に多いというのが現状です。
スイングウェイトが軽すぎるラケットを使っているケースでは、プレイヤーが常に「打ち負けやすい状態」でプレーしているので、それに対応するために変な打ち方になってしまうわけです。
そして、その変な打ち方はラケットが原因なので、自分でいくら治そうとしても治りません。
でも、「スイングウェイトが軽すぎるケースがあって、それによってプレーに弊害が出る」などということは全く想定外のことなので、変な打ち方は「自分の悪いクセ」だと思ってしまうのが普通です。
張りが硬すぎる
ラケットメーカーが自社製品の試打会を行う場合、当然ですが、使用するラケットのストリング・セッティングは打ちやすい状態に仕上げなければなりません。
でも、そういうときの使用張力が、適正テンション範囲を下回っているケースが多いということは、あまり知られていません。
テニス専門誌がニューモデルのテストを行う場合なども同様です。
そんことになってしまった背景や経緯は別にして、現実的に、「適正テンション範囲」は適正ではないのです。
でも、それが常識化していないので、柔らかく張ろうと思って、適正テンションの下限の張力で張って、それでもヒジが痛いなどというケースがいくつも見られるわけです。
どれか1つでも不適切ならアウト!
ラケットの性能は、1.モデル自体の性能、2.スイングウェイト、3.ストリング・セッティングの3つの要素で成り立っているのですが、これらの3要素の重要度は同等で、どれか1つでも不適切であれば、そのラケットはトータルでダメということになります。
つまり、モデル自体の性能の良し悪しとは一切関係なく、スイングウェイトが不適切だったり、ストリング・セッティングが不適切だったり、あるいは、その両方が不適切だったりすれば、そのラケットは使う価値がないということです。
そして、現実的に、スイングウェイトが不適切なケースは少なくありません。
さらに、ストリング・セッティングが不適切なケースも少なくないのです。
この両方が同時に起きているケースもあり、二重苦でどうにもならないという状態です。
ラケット選びの本当の難しさ
ラケット選びというと、普通はモデル選択にばかり目が行きがちですが、それ以外のところに2つの大きな「落とし穴」があって、それにはまってしまうと、どんなモデルを選んでも結局ダメということになってしまいます。
スイングウェイトの数値が適切なものを選び、かつ、適切なストリング・セッティングがほどこされている場合に限って、モデル自体の性能がプレイヤーに合うかどうかを判断することができるわけで、そういう前提条件が整っていないラケットをいくら試打しても、ほとんど意味がないわけです。
「モデル選択以前の問題」というのはこういうことで、多くのプレイヤーが、そんなことが起こり得ると想定していないから「落とし穴」なのですが、その「隠れた落とし穴」に気付かない限り、何度買い替えても身体に合うラケットは手に入らないでしょう。
ラケット選びの本当の難しさはここにある、と言っても言い過ぎではないと思います。