無意識的な運動を獲得する方法
無意識的な反射運動を
自分のものにする方法
こうした「無意識的な反射運動」=「考えなくても、飛んでくるボールに対応できる能力」は、プレー上はとても便利なのですが、いったいどうすれば身につけられるのでしょうか。
その答えはとても簡単で、「同じことを繰り返しやる」です。
この答えを見て、「他にもっと効率的で簡単な近道はないか」と考える方が居るかもしれませんが、残念ながら、そういう良い方法はありません。
地道に同じことを繰り返して、「身体で覚える」しか「無意識的な反射運動」を手に入れる方法はないのです。
ですから、打ち方を習ったばかりの初心者が、ゲームでミスを連発するのは仕方のないことです。
頭で覚えた動きを考えながらやっている状態では、ゲームのスピードに追いつけないわけです。
なので、たくさん練習を積んで、飛んでくるボールに考えなくても対応できるような反射能力を身に付けてからでないと、ゲームで良いプレーができないのです。
運動パターンを記憶する
「身体で覚える」ということについて、少しもっともらしい言い方をすると、次のようになります。
「同じ運動を反復することによって、脳の中の運動をつかさどる部分(思考に関わる部分とは別の小脳など)に、その運動のプロセスが一連の流れとしてワンセットで記録される。
そして、運動のプロセスが一度記憶されると、思考による細部の指示がなくても、一連の動作が自動的に実行に移される。」
もちろん、慣れた運動でも意識しながらやることは可能です。
でも、その時のスピードは意識していないときより遅くなるのが普通です。
多くの場合、慣れていて考えなくてもできることは考えずにやったときのほうが、思考による管理をパスできるので、スピーディに動けるのです。
口うるさい上司(思考)にあれこれ言われながら仕事するより、自分一人(無意識運動)でやったほうが早く終わるのと同じ理屈です。
ショートカットの作成
やり慣れないことをやるときは、最初は考えながら手順を覚えていくわけですが、それを何度も繰り返して慣れると、「次はどうしようか」などと考えなくても、当初の手順どおりに、しかも、素早くできるようになります。
これは、脳の中の運動をつかさどる部分に、一連の手順(運動のプロセス)がワンセットで覚え込まれるためで、ちょうどパソコンのデスクトップにショートカットを作るのと同じようなものだとお考えください。
複雑なフォルダ構成の中にもぐっているファイルでも、デスクトップにそこへのショートカットを作れば一発クリックで開くことができますが、それと同じで、複雑な運動連鎖でもショートカットさえできてしまえば途中の面倒なプロセスを省略できます。
練習を繰り返せば、プレイヤーが「ボールを打とう」と思うだけで、「スタンスを決めて」「左手を前に出して」「ラケットを後ろに引いて」「インパクトに向けて体重を移動して」などと、途中のプロセスをいちいち細かく頭で指示しなくても、身体の各部分が自動的に動いて、飛んでくるボールを打ち返せるようになるわけで、これが「身体で覚える」ということです。
身体の細部の動きを頭でいちいち指示しなくても、反射的に動けるようになるというのが「無意識的な反射運動」なのですが、テニスの場合はさらに、さまざまな状況のボールを処理しなければなりません。
その上、いろいろな狙いを実現するために毎回動きを調整する必要があるので、数え切れないくらい無数のショートカットを覚え込む必要があります。
初心者に対してトップスピンのボールを打ち込めば、十中八九、その返球はアウトすることが多いのですが、それは、初心者の場合、経験値が十分ではないので「トップスピンの返球」というショートカットがまだできていないせいです。
なので、そうした豊富な数のショートカット群ができあがるまで、失敗と成功を繰り返しながら地道に練習を重ねるしか方法はないわけです。
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向上心のあるプレイヤーほど、自分の打ち方をいろいろ改善しようとして、「ああしよう、こうしよう」という課題を抱えながらプレーしていることが多いのですが、自分の打ち方を簡単に直せると思うのは避けたほうが良いようです。
それでは、一度身に付いた無意識的な動きは後で直すことができないのでしょうか。
いいえ、そんなことはありません。
決してそんなことはないのですが、ただ、普通に行われている「意識的に直そうとするやり方」ではうまく行きにくいでしょう。
「知らないうちに変わる」という状態を獲得する一つの方法として、意外かもしれませんが、ラケットの選択や調整が有効です。
なぜなら、ラケットを持ち替えるとプレイヤーの動きが「知らないうちに変わってしまう」からです。