メーカーの商品説明が足りない理由
ラケットメーカーの
商品説明が足りないワケ
何も語らないラケットメーカー
ラケットメーカーの方々と話すときに「この業界くらい、商品について何も語らずに黙々と発売するだけという業界は珍しいんじゃないの!」と皮肉めいたことを言ったことが何度かあります。
私自身、ラケットメーカーのホームページやカタログを隅々まで見渡しても、ラケットという製品について納得できる情報に出会ったことは今までありません。
まるで、できるだけ使う言葉を少なくしようと努めているかのような2~3行の簡素な表現だったり、訳のわからないカタカナが並べてあったりと、商品の魅力をユーザーに理解してもらうことを完全にあきらめているかのような状態だと言えます。
完成品ではない!
でも、そんな状態からどうしても抜け出せない「仕方のない理由」があるのも事実です。
その理由とは、テニスラケットは完成品ではないということです。
通常、テニスラケットは廉価品を除けば、ストリングが張られていないフレームの状態で売られています。
つまり、そのままではボールが打てないのです。
そして、ストリングが張られたラケットで打つとき、ボールが当たるのはフレームではなくストリング面です。
(主にということで、必ずではありません)
ですから、ラケットフレームよりストリングのほうが飛んでいくボールに対する直接の影響が大きいと言えるのです。
ということは、「どんなストリングをどんな硬さに張り上げるか」というストリング・セッティングによってラケットの最終性能が大きく左右されるので、フレームだけで「このラケットはこういう性能です」と大きな声では言えないという事情があるのです。
「フレームだけではラケットの性能が確定しないから、無責任なことは言えないので消極的な表現になってしまう」というのが、わかりにくい商品説明の大元の原因だと言えそうです。
踏み出せる余地はある
でも、消費者にラケットを買ってもらうためには、商品の魅力を理解してもらうことが必要なので、「ストリングを張らないと性能が確定しない」というところに踏みとどまっているだけでは、消費者の利益になりませんし、メーカーも先に進めません。
そこで必要なのは、ストリングが張り上がった状態の性能にまで、メーカーが踏み出すことだと思います。
現状でも、各モデルごとに【推奨ストリング】や【適正テンション】などが表示されているのですが、この業界に少し詳しい人であれば、それらが結構いい加減に決められていて、きちんとした検証がなされていないことを知っています。
(参照:⇒推奨テンションが適切ではない具体例)
自社製品を快適に使ってもらうためのストリング・セッティングについて、ラケットメーカーの姿勢がハッキリすれば、プレーテストによる性能比較などが容易になり、消費者にもそうした情報が提供されやすくなるでしょう。
テニスマーケットの不振が言われてはじめてから長い期間が過ぎていますが、その原因はいろいろあるにせよ、商品の魅力を理解してもらう努力が不足していることも、その一因であることは間違いないと考えます。
「商品説明をしない業界」からの脱出が、今後のテニスマーケットの活性化につながると考えます。
フレームだけでは性能が確定しない
とはいえ、ラケット選びに必要な情報がラケットメーカーからは出てきていないのが現状なのですが、その大元の理由である「フレームだけでは性能が確定しない」ということについては、ラケット選びに頭を悩ます方々にはしっかりとご理解いただく必要があります。
ネット上で飛び交うラケットについての情報があまり頼りにならないのも、同じ理由です。
「何々はこういう感じだ」という情報があったとしても、そのストリング・セッティングがわからなければ、あまり意味のある情報とは言えず、他の人が全く別のことを言うのも当然ということです。
だからこそ、ラケット選びが余計に難しくなるわけです。