ダメラケットを努力で克服できるか

合わないテニスラケットの弊害を
独力で克服しようとする!?

ラケットがプレイヤーにフィットしているとき、プレイヤー自身には次のような感覚が生まれます。

無心に打っているのに、ショットの深さが揃って安定する。
相手がミスしない限り、ラリーを続けることができるような気がする。
ネットせず、アウトしない力加減の範囲が広く感じる。
細かい深さ調整ができる。
多少いい加減に打っても入る気がする。
どんな打ち方でも入るような気がするので普段以上に強打したり、
普通やらないような種類のショットが打ちたくなったりする。
ショットの種類の幅が拡がる。
次のショットに対してスムーズに体が動くようになる。
相手の打球が弱くなったように感じて時間的な余裕ができる。
手応え的にはちょっと物足りない気もするけれどショットはうまくいっている。
打つことだけに意識がとらわれることなくコート全体に注意を向けられる。

こんな感覚になったことがある方は、それに「特別調子が良かった時」というタイトルを付けて記憶の倉庫にしまい込んでいませんか?
ラケットがフィットしていないと、プレイヤーには次のような感覚が生まれます。

打球の深さが安定しない。アウトやネットが多いので深さ調節に神経を使う。
ネットせず、アウトしない力加減の範囲が狭く感じる。
ネットしないよう気をつけると逆にアウトしたりする。
いつも安全な打ち方に終始して冒険できない。
インパクト後の腕の振りに、力みや違和感が残る。最後まで脱力できない。
ショットのあとに足に力が入っていて、ちょっとの間静止している。
ショットのあとに上体が前傾したり、後傾したりしてちょっとフラつく。
1回1回のショットに神経を使っている気がする。

こんな感じの時、「今日は調子が悪いなぁ」と単純に片づけていませんか?

何も考えず無心に打っていてショットの深さが深く揃っているときは「調子が良い時」で、ショットが安定しないときは「調子が悪い時」と考える方が多いと思いますが、それは単に、ラケットが合っている状態と合っていない状態の差ではないかと疑ってみても良いでしょう。

スイングを調節しなくても、ストロークの飛びが適切な深さになるようにラケットがセットされていると、プレイヤーはとても気が楽になり余裕が生まれます。

その反対に、アウトしやすいのでちょっと抑え気味に打とうとしていると抑えすぎてネットミスが増えたり、その逆のパターンもあったりしますが、そういう状態ではプレイヤーは「打つこと」に神経を使わざるを得ません。

プレイヤーのスイングパワーに対して特別な調節を必要としない状態(ニュートラルな状態)が作れればプレイヤーは深さ調節の煩わしさから解放されます。

「特別に調子の良い状態」というのは、もしかすると単にラケットが合っているだけで、それが「本来の実力」なのではないでしょうか。
それ以外の時は、調子が悪いのではなく、合わないラケットとの折り合いを付けることに煩わされて、プレーが上手くいっていないだけなのでは。

ストロークで望ましい深さがベースライン内側2mだとすれば、そこに打球を集めるために意識を集中させる必要がある場合は、ラケットが合っていないと言えるでしょう。

何も考えずにボールをヒットした時に、適切な深さに飛ぶラケットを選べば、「ショットの深さをコントロールする」という毎度毎度の作業からプレイヤーは解放されます。

打つことに意識を集中させる必要がなくなれば、プレイヤーの意識には余裕が生まれます。

プレイヤーのスイングパワーとラケットのパワー、ボールの飛び(ショットの深さ)などを、数字を使ってイメージ的に説明するとこんな感じになると思います。

プレイヤー自身のスイングパワーを仮に5とします。
適切なボールの飛び(深さ)が10とすれば、ラケットのパワーが5であれば、以下のような状態になります。

プレイヤーのスイングパワー【5】+ラケットのパワー【5】=適切な飛び【10】

このプレイヤーが、パワー4のラケットを使うと以下のようになります。
プレイヤーのスイングパワー【5】+ラケットのパワー【4】=ボールの飛び【9】

この場合、プレイヤーは努力して適切な飛びにしようとします。
プレイヤーのスイングパワー【5+1】+ラケットのパワー【4】=適切な飛び【10】

このように、本来のスイングパワーより少し「力む」ことが必要になります。

この反対に、ラケットのパワーが過剰で6の場合は以下のようになります。

プレイヤーのスイングパワー【5-1】+ラケットのパワー【6】=適切な飛び【10】

この場合は運動を抑える必要があるわけです。

このように、本来のスイングパワーに対して常にマイナスやプラスの調整が必要な場合、プレイヤーには大きな負担がかかります。
1回1回のショットについて調節が必要なので神経が休まらず、調節の狂いが発生して深さがバラつきやすくなり、アウトやネットのミスにつながります。

その結果、さらに打つことに集中する必要が生じるため、「打つこと」以外の他のことに注意が向けられない状態になります。

ラケットがプレイヤーにフィットしている状態というのは、一般に考えられているよりかなり狭いので、「5+5=10」というフィットした状態から外れてしまう可能性はたくさんあります。

気温の変化やストリングの劣化によって、本来5だったラケットのパワーが4になったり、6になったりします。
また、プレイヤーのパワーも疲労によって低下して、5だったものが4や3になったりします。

いつも使っている同じラケットが、気温や状況の変化で合ったり合わなかったりするため、ラケットのせいではなく、自分の調子のせいだと思いやすいのです。

フィットした状態から外れたとき、通常はプレイヤーの努力で対応しなければなりませんが、ストリングの硬さを変える等で調整できればプレイヤーの負担は減ります。

「試打して良かったから買ってみたけど、実際に使ってみたらダメだった。」などという例は、この「フィットしている状態はかなり狭い」ということをよく理解していないせいだと思われます。

試打をしてラケットの名前だけ覚えて帰って、そのモデル名だけを指定してラケットを購入しても、スイングウェイトやストリングセッティングをきちんとコピーしないと、フィットしたラケットを復元することができないのです。

TENNIS-ONEでは同じラケットを2本使う場合、異なるセッティングにすることをおすすめしています。
それは、いろんな状況でその2本を使い比べることで、合っている状態と合っていない状態の比較ができるからです。

フィットしている状態に入ったり、そこから外れたりという経験を繰り返すと、フィットしている状態に対して敏感になり、そこから外れたときにすぐに分かるようになります。

そうなれば、問題が発生したときに、ラケットで解決しなければならないことと、技術的に解決しなければならないことの正しい区別ができるようになります。

例えば、以下のような判断は普通にありがちですが、基本的には、ラケットで解決すべき問題ではありません。

「振り遅れることが多いので、重量やスイングウェイトの軽いラケットに替える。」
「フレームショットが多いので、フェースサイズの大きいラケットに替える。」

このような問題をラケットで解決しようとすると、良い結果が得られないばかりか、別な障害が発生する可能性があります。

この逆で、以下のような場合はラケットに解決策を求めたほうが有効でしょう。

「ショットが安定せず、アウトやネットが多い。」
「スピンをかけようとするとネットが多くなって上手くかけられない。」
「力を入れて打っている割に、簡単に打ち返されてしまう。」

これらの問題は、通常はプレイヤーの技術上の問題とされてきましたが、ラケットに手を付けずにプレイヤーだけが努力しても、効果はあまり期待できないでしょう。

もちろん、誰にでも調子の良い時、悪い時はあるでしょうが、結果の全てをプレイヤーの責任にしてしまう傾向が一般的には強いといえます。

多くのプレイヤーは「ショットの安定性」を手に入れるために練習を重ねていますが、もしかするとそれは、「合わないラケットの障害」を乗り越えるための努力かもしれません。
そうだとすると、それは本来、する必要のない努力だといえます。

合っているラケットを使えばショットは安定し、プレイヤーはリラックスします。
その状態を獲得するためにプレイヤー自身の努力は必要ありません。
ラケットの選択とストリングの調整に気を使えば良いだけです。

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