大きく振り切るのは必要?
テニスのスイングで
振り切るのは必要ですか?
【質問】
振り切るスイングは必要?
インパクトでボールを押すように心がけていたのですが、結果的に、インパクトでブロックするような打ち方になってしまって、振り抜けなくなりました。
でも、インパクトでラケットとボールが接触している時間は短いと聞きましたので、振り抜かなくても別に問題はないのでしょうか。
また、振り抜くスイングに変えるにはどうすればいいのでしょうか。
【回答】
インパクトでボールがストリング面に振れている時間は千分の4秒前後とされており、ご質問者が言われるように、とても短い時間です。
当然ですが、ラケット側がボールに対して何らかの影響を行使できるのは、ボールがストリング面に接している間だけですので、ストリング面がボールに触れていなければ、ラケットの動きでボールを動かすことはできません。
ですから、インパクト前後の、ストリングがボールと接していない時にラケットがどう動こうと、ボールの動きに影響はありません。
ということで、ボールと接する千分の4秒前後の間だけ、ラケットが適切な動きをすれば良いわけですが、現実的には、それは不可能です。
飛んでくるボールのエネルギーに負けないようにして打ち返すためには、ラケット側のヘッドスピードがある程度以上の速度に達していることが必要ですが、そうした速度を得るためには加速させるための助走区間が必要になります。
インパクト直前にラケットヘッドを瞬時に急加速させることは普通はできないので、必要な速度に達するまでの準備区間が必要になり、それが、テイクバックからインパクトにつながるフォワードスイングです。
このように、インパクト前にはヘッドスピードを加速させるためのスイングが必要だとしても、ボールが飛んで行った後のフォロースルーにはどんな役割があるのでしょうか。実は、何もありません。
当たる前であれば、ラケットの動きはインパクトに何らかの影響を与えられますが、ボールはすでに打ち出されて飛んでいってしまったあとなので、ラケットがどう動いても物理的にボールに対して何の影響も与えられません。
では、無くても良いのでしょうか。別に無くても良いのです。
ですが、無くても良いのと、実際に無くすのは意味が全く違います。
フォロースルーを無くすというのは、インパクト後のラケットの移動を停止させるということですが、それ自体が立派な運動なのです。
ある程度の速度で動いてきたものを急速に停止させるには、そこまで加速させるのに要したのと同量のエネルギーが必要です。
ですから、急激に止めようとすればするほど大きなエネルギーが必要になるわけですが、インパクト直後に瞬間的に急停止させるのは無理なので、その前から多少は減速させていく必要があります。
その結果、インパクトに向けてヘッドスピードが遅くなるようにスイングが調整され、「インパクト直後にヘッドが止まることが織り込まれたスイング」になってしまうわけです。
100m走で、ゴールの5m先がコンクリートの壁になっていたら、ゴールラインを全速力で走り抜く勇気を持ったランナーは居ないでしょう。
当然、ゴール前から減速し始めるわけですが、それと同じことが、スイング上で起きてしまうわけです。
フォールースルー自体には特別な役割はありませんので、ボールが当たった後は放置すれば良いだけです。
そうすれば、インパクト後に残っている運動エネルギー(ヘッドスピード)の大きさだけ移動して、あとは自然に止まります。
無理に、取って付けたような大きなフォロースルーなど要らないわけで、短距離走でゴールした後のランナーのようなもので、ほっとけば良いのです。
また、先述したように、インパクトの時間はとても短く、それに対して、人間の神経伝達速度はあまり速くないようで、それを前提にすると、感覚的な把握は実際より遅れている可能性が高いのです。
インパクトが終わってしまったあとに、「当たった」と感じるのが現実のようです。
ですから、「押す」とか「力を入れる」というのは、合理的なインパクト感覚ではないと言ったほうが良いかもしれません。現実的には「あと出し」になっている可能性が高いのです。
正確なインパクト把握はできないから、その辺は、適当に、アバウトに振り抜いてしまったほうが、スイングエネルギーが打球に伝わりやすいようです。
スイングエネルギーを打球に無駄なく伝えるためのインパクトイメージは「手応えなく通り抜ける」です。
通過スピードを極限まで速めることが強い打球を生む方法であって、強い力を入れて打っても打球は強くなりません。
また、ラケットヘッドを止めてもボールを飛ばすことはできますが、その振り方では打球を打ち出すだけで、打球の軌道を押さえ込むことはできません。
打球をコートに入れるためには、飛ばすのと同時に押さえ込むことが必要で、そのためには、インパクトポイントを高速で通過するヘッドスピードが不可欠です。
具体的には、風の無い日に、コートにキッズ用のスポンジボールを持ち込んで、できるだけ遠い距離で打ち合って下さい。
ブンブン振り回さないとベースライン近くからのラリーは続きません。
手応えのないインパクト感覚と、力ではなくスイングスピードでボールを飛ばす感覚が身に付けば、自然な振り抜きと勢いのある打球が手に入るはずです。やってみていただければと存じます。