スピンがかからないのはガット張りのせい
スピンがかかりにくいのはガット張りのせい
スピンをかけるのはガット
スピンをかけやすいラケットを探す方は多いのですが、ガット張りが適切でなければ、どんなラケットを選んでも効果はありません。
なぜなら、インパクトでボールに直接触れるのはガットなので、スピンをかける主役はフレームではなくガットだからです。
フレームの役割は、インパクトで発生したガットのアクションを受け取るだけなので、ガットアクションをサポートすることはできても、スピンをかける主役ではないわけです。
スナップバック
インパクトの瞬間を高速度撮影すると、スピンをかけるときにガットがどんな動きをしているのかがわかります。
スピンをかけるために上方向に振られたラケットのガットにボールが当たると、ボールの抵抗でガットが下方向にズレて、そのズレたガットが元の位置に戻るときに、飛んでいくボールに回転がかかることがわかります。
この「ガットが動いて戻る現象」がスピンの元ということです。
そして、インパクトでボールがガットに接している時間は千分の3〜5秒程度と、とても短い時間なので、その短い時間に動いたガットが元に戻らないとスピンがかかりません。
この、短い時間に素早く戻る動きのことを「スナップバック」と名付けたのがウイルソンです。
Click!⇒スナップバックについて
推奨テンションの影響で、ご自分のラケットのストリングが硬すぎる状態になっていることに気づいていないケースが多いのですが、張りが硬いとスナップバック機能が働きにくくなるので、ボールがつかまらずに面からこぼれやすくなり、コントロール感が乏しくなります。…
ガットが動かない
スピンは、動いたガットが戻るときにかかるため、戻る前には事前に動くことが必要なので、ボールが当たったときに動かなければ戻りようがありません。
そして、インパクトでガットが動かない原因は二つあって、一つは「張上が硬すぎるケース」と、もう一つは、使用によって「ガットの表面がガサガサになっているケース」です。
最初の「張上が硬いケース」では、常にガットに強い力がかかっている状態になるので、インパクトでボールが当たっても動きにくくなります。
二つ目の「ガットの表面がガサガサになっているケース」では、張り立てのときは表面がツルツルだったガットも、使用によってボールとの摩擦やガット同士の摩擦によって表面がガサガサになりますが、そうすると、ガットが動くときの摩擦抵抗が大きくなるので、やはり、インパクトでガットが動きにくくなります。
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GUT LIVEはガットが動く状態をキープする潤滑保護剤です。ガットが動くとボールをつかむ「食いつき感」が生まれ、動いたガットが戻るときに打球にスピードとスピンがプラスされる。ガットがスムーズに動く状態をキープすることが威力とコントロールの基本…
動いて戻る硬さ
張上が硬いとガットが動かないのなら、柔らかければ良いのかということですが、それはそのとおりで、張上が柔らかければガットが動くのですが、でも、柔らかすぎると戻る力が弱くて行ったきりになってしまうので、動いても戻らなければスピンがかかりません。
張上が硬いと動かず、柔らかいと戻らないのであれば、硬くも柔らかくもない硬さに張り上げるしかないわけで、スピンをかけるには「動いて戻る硬さが大前提」というのが、このテーマの結論です。
ガットが動かないと
持ち上げにくくなる
インパクトでガットが動かないとボールの食いつきが弱くなるので、ボールをつかむ感覚が生まれにくいため、球筋が持ち上がりにくくなりネットが増えます。
私どもではこの現象を「ボールが面からこぼれる」と呼んでいます。
そうなると、低い球筋は危険なので高い打球軌道で打つようになるのですが、打球起動が高くなるとアウトするリスクが増します。
そうすると回転をかけることが必須になるのですが、先述したように、動かないガットはボールが引っかかりにくいためにスピンがかかりにくいので、より強く回転をかける動きが必要になります。
回転過剰
そして、強い回転をかけようとすると、上方向に振り抜くスイングの角度が急角度になるので当たりが薄くなります。
ボールの芯を打ち抜くような「厚い当たり」とは対称的に、ボールのまわりをこするような「薄い当たり」になるわけです。
さらに、このような形で、前に飛ぶボールの方向と、上に振り抜くスイングの方向が大きくズレた状態になると、回転量は増えても前に飛んでいくスピードが落ちてしまいます。
これがいわゆる「回転過剰」の状態で、回転量が多くてもスピードがなければ相手に時間を与えてしまうので、打ち合いが長引くようになります。
「ガットが動かない⇒持ち上げにくい⇒打球軌道が高くなる⇒スピンをかける⇒打球が遅くなる⇒打ち合いが長引く」という仕組みです。
強い回転をかける打ち方は、そのスイング自体はパワフルな印象で迫力があるのですが、その割に打球にはあまり迫力がないという場合は、スピンをかけにくいラケットのせいで、過剰にスピンをかける状態になってしまっている可能性が高いでしょう。
スピンガット
「スピンをかけやすいガット」などの言葉で検索すると、ガットの表面をデコボコにした、いわゆる「スピンガット」に行き着くと思いますが、これについては注意が必要です。
ガットの表面をデコボコにしたり、角を立てたりすることで、ボールとガットの摩擦を大きくして回転をかけようという発想なのですが、この方法ではガット同士の摩擦も大きくなるため、ガットが動きにくくなります。
表面がガサガサになったガットと同じということです。
そして、動きにくいガットで表面の摩擦だけでスピンをかけようとすると、薄い当たりの「こする」打ち方になります。
スナップバックで
スピンをかける
それに対して、ガットが動いて戻る「スナップバック」でスピンをかける場合は、薄い当たりより厚い当たりのほうがガットに強い力がかかるので、動いて戻るアクションも大きくなるため、ボールの芯を打ち抜くようなスイングができます。
ですから、「こする」というより「振り抜く」というようなスイングイメージになります。
Sタイプのラケット
スナップバックという言葉を世間に広めたウイルソンですが、同時に、縦ガットの本数を減らした「スピンタイプ(Sタイプ)」というラケットも発売しましたが、最近はあまり見かけなくなっています。
Sタイプのラケットは、縦ガットの本数を少なくすれば隣のガットとの間隔が広くなるので動きやすくなるという発想だったのですが、そんなことをしなくても、ガットが動いて戻る硬さに張り上げれば済むことなので、必要なくなったのではないかと思います。
振れば振るほど
安定して入る
一生懸命振ってスピンをかけている割に、打球が遅くて打ち合いが続いてしまうのは、強いスピンをかけないと打球がスッポ抜けてしまうという不安感があるからですが、その大元の原因は、ボールがつかまりにくい「硬すぎる張り上がり」にあることが多いようです。
こすらずに厚い当たりで「振れば振るほど安定して入る」という状態を獲得するのが、ガット張りの目指すべきゴールです。
Click!⇒ガットの硬さの良否は「振り抜きの良さ」で判断する
「振り抜きが良いかどうか」はフレームの性能だと思っている方が多いようですが、実は「ガット張りの硬さの影響」がかなり大きいようです。なので、「振り抜きの良さ」をガット張りの硬さが適切かどうかを判断するための重要なチェックポイントとしてお考えください…
もっとも、その状態を獲得するには、フレームの特性もプレイヤーに合っていることが前提になります。
ガット張りは大切ですが、ガット張りだけではダメなフレームをカバーすることはできないからです。
知らないと損
ガットについての情報
ガット張りについての40件以上の記事が以下の4つのジャンルに分類されています。
Click!⇒ガット張りで損をする
ラケット選びには真剣に取り組んでも、ガット張りのことはイマイチよくわからないという方は少なくないようです。でも、実際にボールを打つのはガットで、フレームはガットのアクションを受け取るだけなので、ラケットのパフォーマンスの主役はガットです。なので、ガット張りを軽視するとプレー上の大きな損失につながります。
Click!⇒ガットの種類の選び方
テニスガットについての記事を集めたコーナーです。ガットの基本知識や素材や太さの選び方などの解説と、スピンのかけやすさや打球フィーリングについての記事を紹介しています。ガットについては小さな誤解で大きな損をすることがあるので正しい情報を収集してください。
Click!⇒ガット張りの硬さについて
ガット張りの硬さについてのアドバイスを集めたコーナー。ガット張りについては未開拓の荒野のような状態で、多くのプレイヤーがいまだに「推奨テンションの呪縛」にとらわれています。そのため「快適なプレー」という目的地にたどり着くためのルートを見つけるのは容易ではありません。正しい情報を得て迷路から抜け出してください。
Click!⇒ガットについてさらに詳しく!
ガットについてもっと詳しく知りたい方のための記事を集めたコーナーです。適切な硬さを見つけるための情報と不適切な張上の弊害等についての記事があります。「好きな打球感のセッティング」というワナにハマると戦力低下という迷路から抜け出せなくなります。