ラケットで大損していても分からない
ラケット選びが難しいのは
損していても分からないこと
テニスラケット選びの難しさについて、ちょっと変わった視点で説明させていただきます。
自分に合うラケットを探そうとして、ネット上でラケット選びについての情報を集めようとしている方は多いのですが、そう考える方はまだマシで、自分に合うラケットを探そうとしていない方のほうが大きな問題を抱えているケースが多いようです。
というのも、合わないラケットのせいで自分が損をしていることに気付いていない方が圧倒的に多いのです。
力んでいる割にショットに勢いがなく、深さがバラついてミスが出やすいという症状は、ラケットのせいで起きていることが珍しくないのですが、本人がそれに気付くことはほとんどありません。
その仕組みは、次の5項目をお読めばご理解いただけると思います。
1.ラケットの性能はショットの結果に影響する
2.プレイヤーは同じミスを繰り返したくない
3.ラケットの影響を打ち消すような打ち方になる
4.ラケットの特性はプレイヤーの打ち方に影響する
5.打ち方の変化を自覚するのはほとんど無理
1.ラケットの性能はショットの結果に影響する
ラケットは基本的にフェースが大きいほどボールが簡単に飛びますが、それ以外に、フレームの厚さや剛性などもボールの飛びに影響し、さらに、張ってあるストリングの種類や硬さによっても飛び方が大きく変わります。
ですから、プレイヤーが異なるラケットを同じスイングで打ったときは、良く飛ぶラケットでは飛びすぎてアウトしたり、飛びの悪いラケットではネットしたりというように、ラケットの特性がショットの結果を左右します。
2.プレイヤーは同じミスを繰り返したくない
でも、そんな形でラケットの影響によるミスが出たとしても、その状態がずっと続くようなことは普通はありません。
なぜなら、一度ミスが出た後は、同じミスが続かないように打ち方が修正されるからです。
どんなプレイヤーも、ショットの結果に対応して打ち方が調整されるので、良く飛ぶラケットでアウトし続けたり、飛ばないラケットでネットし続けたりというようなことは起きないわけです。
3.ラケットの影響を打ち消すような打ち方になる
テニスは、アウトしたりネットしたりしないように打つことが最優先のスポーツなので、ラケットを持ち替えたときもその優先度が変わることはありません。
ですから、どんなラケットを選んでも、そのラケットの影響がショットの結果に出続けることはなく、ラケットの影響が打ち消されるように打ち方が変わります。
そのため、良く飛ぶラケットを使うと、打球がアウトするのを防ぐために飛びを抑える打ち方になり、飛ばないラケットでは打球が短くならないように力を入れて打つようになります。
このように、プレイヤーは適切な結果を出そうとして、ラケットの特性と逆の動きをすることが多いので、ショットの結果を見てラケットの影響を判断するときには注意が必要です。
よくある例では、ストロークなどでアウトが多いと、普通は「ラケットが飛び過ぎるせいだ」と判断してしまうのですが、本当の原因は逆であることがほとんどなのです
つまり、ラケットが飛び過ぎるからアウトするのではなく、逆に、ラケットの飛びが悪いので、力を入れて飛ばそうとする動きになってアウトが増えるという仕組なのです。
4.ラケットの特性はプレイヤーの打ち方に影響する
てすから、最初に書いた「ラケットの性能はショットの結果に影響する」というのは、ラケットを持ち替えた直後にだけ言えることで、しばらく使ったラケットについてはそうではないのです。
コートの広さが決まっていて、プレイヤーがその中に打とうとする限り、ラケットの特性が直接的にショットの結果に影響するのではなく、ラケットの特性はプレイヤーの打ち方に影響すると考えたほうが判断ミスを防げるでしょう。
5.打ち方の変化を自覚するのはほとんど無理
そして、このことが、自分に合うラケットを自分で見つけるのが困難な最大の理由です。
なぜなら、自分の動きがラケットによってどういう影響を受けているのかをプレー中に把握するのはほとんど無理だからです。
テニスは、動き回るボールに注意を向け続けないとプレーできないスポーツなので、自分の身体の動きに注意を向けながら打ち合いを続けるのはとても難しいのです。
ですから、自分のプレー動画を見たときに初めて、自分の打ち方が変だと気付くわけです。
プレーの動画を見たときに、自分の動きが自分の想像していたとおりだったという方はとても少ないはずですが、それくらい自分の動きは自分ではわからないのです。
ですから、自分の変な打ち方に気付かないということは、それが変化して良くなっても気付かないわけで、ラケットを持ち替えて打ち方が変わっても、それをハッキリと自覚する人はほとんどいません。
なので、ラケットを持ち替えても大して変わらないと思ってしまうわけです。
ても、特性の異なるラケットに持ち替えても打球が同じようにコートに入っている場合は、ラケットの特性に合わせて打ち方が変わったということです。
そうした動きの変化を見なければラケットの違いがわからないのですが、それは本人にはとうてい無理ということです。
こうした仕組みで、ラケットの影響でかなり損をしていても、普通はそういう自覚が生まれないので、使っているラケットに問題があるなどとはこれっぽっちも疑わないわけです。