バランスポイントについての解説
テニスラケットの
バランスポイントについて
バランスポイントでは
トップヘビーかどうかは分からない
テニスラケットのカタログには、「重量」の他に「バランスポイント」の数値が書いてあります。
そして、この数値が大きいとトップヘビーで、小さいとトップライトだと受け取られることが多いのですが、実際には正しい判断とは言えないのです。
そしてこれも、テニスラケットについての誤解をもたらす「落とし穴」の一つです。
バランスポイントで
判断されるケースが多い
バランスポイントの数値は、グリップエンドから重心位置までの距離を表す数値で、値が大きい場合は重心位置がグリップエンドから遠いということを示しています。
重心の位置が先のほうにあるということは、ラケットの先が重い、すなわち「トップヘビー」だと思われがちです。そのため、バランスポイントが370mmのラケットは310mmのラケットよりトップが重いと判断されることが少なくありません。
でも実際にはそうではないのです。
実際に持って
比べてみる
その説明の前に、カタログ等ではバランスポイントの数値の横に重量の数値も書いてあるはずですので、それをチェックしてみてください。
そうすると、 370mmのラケットは重量がかなり軽く、310mmのラケットの重量はかなり重めであることが分かると思います。
つまり、バランスポイントの数値が大きいラケットは重量が軽く、バランスポイントの数値が小さいラケットは重量が重めであるということです。
その仕組みについては、言葉で説明するより実際に比べてみたほうが話が早いでしょう。
下の図のようにラケットのグリップではなく、トップ部分を手に持って振ってみて下さい。
バランスポイントが370mmのラケットは、310mmのラケットより先の部分(グリップ)がかなり軽く感じるのが分かると思います。
長い物の端を持ったときの重量感には先端部分の重さが大きく影響するので、ということは、バランスポイントが370mmのラケットはグリップ部分が軽く、310mmのラケットはグリップ部分が重いということです。
それに比べると、普通に両方のラケットのグリップ部分を持って振ったときには、トップ部分を持った時ほどの大きな違いは感じないでしょう。
つまり、フェース部分の重さには、それほどの違いはないということです。
大きく変わるのは
グリップ部の重さ
「テニスラケットの重量と振ったときの重量感の違い」のブログでも書きましたが、ラケットのフェース部分はボールが当たる場所なので、そこが極端に重すぎたり軽すぎたりすると、通常の使用に適さないのです。
ですから、そこの重さがモデル毎に大幅に変わるということはないわけで、大きく変わるのはグリップ部分の重さなのです。
グリップライトか
グリップヘビーか
グリップ部分が重ければ重心位置はグリップ側に寄るため、バランスポイントの数値は小さくなります。
逆に、グリップ部分が軽ければ重心位置はトップ側に寄るので、バランスポイントの数値は大きくなるというのがラケットの基本で、つまり、バランスポイントで分かることは、「トップヘビーかトップライトか」ではなく、「グリップライトかグリップヘビーか」ということです。
言葉の上でも、トップヘビーというのはトップが重いということですが、そういうとらえ方では全体重量が軽いことの説明ができません。
それに対して、グリップライトであれば、グリップ部分が軽いから全体重量も軽くなっているという説明ができます。
そして、グリップ部分を持ってラケットを振ったときの重量感に大きく影響するのはトップ部分の重量ですので、グリップ部分が重くても軽くても、振ったときの重量感には大きく影響しないのです。
スイングウェイトを
計測するしかない
という仕組みで、バランスポイントの数値はグリップ部分の重さの影響を強く受けるため、振ったときの重量感を判断する材料としては適切ではないわけです。
結論としては、バランスポイントの数値ではトップが重いかどうかは分からないので、振ったときの重量感を知るためには、やはり、スイングウェイトを計測するしかないということです。
(参照:「テニスラケットのスイングウェイトについて」)
重量とバランスポイントの数値は、どちらか片方だけでは重量感を推測する材料にはならないので、必ずワンセットで見る必要があるのですが、たとえ、重量とバランスポイントの数値が比較できても、重量感はイメージできません。
例えば、300gで320mmのラケットと310gで315mmのラケットが有った場合、実際に振ったときには、どちらが重い感じがするのかは簡単にイメージすることができません。
その点、スイングウェイトの数値がわかっていれば、重量感の違いが一つの数値の大小でイメージできるのです。
ラケット選びの役に立つ情報がこのコーナーに詰まっています。
ラケットの選び方
【補足情報】
ここまでが結論で、これ以降はちょっと面倒な話なので、特に興味のある方以外は読まなくても結構です。
バランスポイントの数値は、あくまで静止状態の重心位置を示すだけですが、実際にプレーするときにはラケットを振って使うので、動いているときのための計算が必要になります。
長さのあるものの端を持って振るときの重量感を示すのは「慣性モーメント(通称:スイングウェイト)」という数値で、静止しているラケットを振り始めたり、振られているラケットを止めたりするときの重量感を表します。つまり、「操作する上での重量感」ということです。
下の図はスイングウェイトの基礎的な計算を示したものです。
長さのあるものに一定の重さのものを取り付ける場合、先端部分に付けたときと中央部分に付けたときで「振る時の負担の大きさ(慣性モーメント)」を比べると、計算上では先端のほうが中央より4倍の負担になります。(※2倍ではありません)」
これは、慣性モーメントの計算値は、重さのある位置までの「距離の二乗に比例する」ということからきています。
距離が2倍になる場合は、慣性モーメントの数値は4倍になるわけです。
(図では、黒丸以外の部分の重量は無いものとして計算しています。)
慣性モーメントの計算値は「距離の二乗に比例する」のですが、バランスポイントの計算値は「距離に比例する」ため、静止状態のバランスポイントと動いている状態の慣性モーメントでは、結果が全く異なるわけです。
その極端な例を示します。
こういうラケットは実在しませんが、あくまで計算上の話として、ラケットの中央部分に300gの重さ全てが集中しているラケット①と、ラケットの両端に150gずつの重さが分かれているラケット②があったとします。
この二つのラケットの全体重量とバランスポイントの位置は全く同じです。つまり、重量とバランスポイントの数値でラケットの重量感を判断している限り、この二つのラケットは区別が付きません。
でも、振ったときの重量感では2倍の違いが出ます。
②のラケットのヘッド部分の重量は①の半分しかありませんが、グリップからの距離では2倍になるため、
①では、300g×距離1の二乗=300×1×1=300で、
②では、150g×距離2の二乗=150×2の二乗=600という計算です。
同じ重量とバランスポイントであっても、振るときの重量感には2倍の違いが出てしまうということです。
これは計算上の話ですが、実際のラケットについてもこうしたことが起こり得ます。
基本的には、重量とバランスポイントの数値が同じであっても、それで把握しきれない重量配分の内容次第で、振ったときの重量感は大きく変わってしまう可能性があるということです。
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