打球の重さってどういうこと
テニスのショットで「打球の重さ」って何?
重い打球」というのは、ハードヒッターを自認するプレイヤーにとっては、とても魅力的に聞こえるはずです。
なぜなら、「重い打球」とは、ボールが重くて思うようにコントロールできないために返球に失敗しやすい打球ということなので、単なるスピードボールよりうれしいほめ言葉だからです。
でも、「重い打球」と一口に言っても、物理的にはテニスボールの重さは約60g程度で、打ち合いの最中にその重さが変わるはずがないことは誰もが知っています。
それではなぜ、「重い打球」という言葉がこれだけ一般化したのでしょうか。
それは、ボールの重量という客観的な事象についてのことではなく、それを受ける側、打ち返す側の「感覚」から生まれることだからでしょう。
ですから、物理的に説明するのは難しいので、テニスワンの独断に基づいて感覚的に解説したいと思います。
インパクトのタイミングがわずかに遅れた
インパクトでボールが重いと感じるのは、ボールから受ける抵抗感が強く、ラケットがボールに押される感じがあるためです。
これと似たような感覚はオフセンターヒットでも生まれます。
インパクトでスイートエリア外にボールが当たると打球衝撃が強くなり、その影響でスイングスピードが減速するため、スムーズに振り抜くことができなくなります。
こうしたオフセンターヒットによる打球衝撃は、インパクトの位置がズレたことが原因ですが、これに対して、インパクトでボールが重いと感じる場合は、インパクトの時間のズレが原因のようです。
スイングのパワーを効率良くボールに伝えられるポイントは一か所で、そこを外すと打球衝撃が発生してボールの飛びが悪くなります。
インパクトタイミングが早くても遅くても打球の勢いは出ないのですが、特に、ベストなインパクトタイミングより遅れたときに、ボールから押される感じが強くなります。
別な言葉では、差し込まれたという状態です。
オフセンターヒットの手応えはガツンという衝撃感ですが、タイミングが遅れたときの手応えは鋭い衝撃感ではなく、ズシンという鈍い重さ感だと言えます。
ということで、ボール1〜2個打点が遅れたときに重く感じるわけですが、それを時間に直すと千分の数秒というわずかな時間です。
手元で予想外に速かった
ですが、プレイヤー自身は自分のスイングタイミングが遅れたときにはそれがわかるので、そういうときは遅れたとは感じてもボールの重さが違うとは思わないはずです。
ではなぜ、重いと感じるのでしょうか。
それは、自分のスイングタイミングが遅れていないのにボール1〜2個打点が遅れたからです。
振り遅れたという自覚はないのにうまく打ち返せなかったのはボールのせいだと考えるわけです。
そして、インパクトが遅れたのは実際にボールが速かったからなのですが、でもそれは、単純なボールスピードの問題ではありません。
飛んで来るスピードが速ければ遅れたという自覚が生まれるので、飛んで来るボールはそれほど速くないのに、手元に来て予想外に速かったから、結果的にわずかに遅れたというのが重く感じる仕組みです。
プレイヤー自身にはわずかに遅れたという自覚がないのに、インパクトでズシンという重さを感じたので「重い打球」という印象になるわけです。
減速が刷り込まれている
相手から打ち出された打球は時間の経過とともに速度が失われます。
特に、着地したときはコートとの摩擦によって大きく減速します。
そうした減速は、飛んで来るボールを見慣れているプレイヤーの頭にしっかり刷り込まれているので、「減速するはずだ!」と意識して見ない限り、減速しているとは感じないのが普通です。
でも、たまに、飛んで来る打球の減速が予想より少ないケースがあって、そういうときは、手元に来たときの打球スピードが普段より速いので、逆に加速したように感じます。
別の言葉では、打球が伸びてくると感じるわけです。
物理的には、打球が途中で加速して伸びることは絶対にないので、「伸び=失速が少ない」ということであり、予測より失速が少ないときに打球が伸びると言われるわけです。
軽い打球
逆に、飛んで来る打球の減速が予想より大きいと返球が容易になるため、軽い打球と言われます。
飛んで来る打球の減速が予想より大きいときは、打ち返す側は十分に準備が整っていて、適切なタイミングで自由に打ち込むことができるので軽い打球と感じるわけです。
飛んで来るボールが軽いか重いかは着地後の減速が大きいか少ないかによって決まるわけで、減速の少ない伸びる打球は重く感じ、減速の大きい失速する打球は軽いと感じるという仕組みのようです。