面が大きいとガシャリが減る?

ラケットのフェースが大きいと
フレームショットが減る?

フェースの小さいモデルへの買い換えを検討する際に、一番初めに頭に浮かぶのは、「フェースサイズを小さくしたら、うまく当たらなくなるんじゃないか」という思いではないでしょうか。

的が大きければ当たりやすい!?

「フェースを小さくするとフレームショットが増える」というのは、多くのプレイヤーの常識になっています。
特にボレーについては、フェースの小さいラケットは不利だと思われているようです。
では、実際にはどうなのでしょうか。

ボールを投げて何かに当てようとするとき、当然ですが、その的が大きいほど当たる確率は高くなります。
3m先のボールの缶に当てるより、3m先のドラム缶に当てるほうがはるかに簡単です。
そんなイメージがベースになって、フェースが大きいほうが当たりやすいという通念ができあがっているのではないでしょうか。

ボレーというショットは「ボールの飛んでくるコースにラケットフェースを構えて待っている」というようなイメージが一般的にあるようで、そのために先程の「的が大きければ当たりやすい」というイメージにつながりやすいのでしょう。

インパクトはわずかな一瞬

しかし実際には、ボレーにおいてもラケットフェースはインパクト前後で動き続けています。
もし、インパクトポイントでラケットが止まった状態でボールを待っていたら、飛んでくるボールの勢いに負けてブレてしまうでしょうし、何より、思ったところに打ち込むことができないでしょう。

ストロークよりラケットの動きは小さいにしても、ボレーにおいてもラケットヘッドはボールを打ち返す方向に動いています。
それに加えて、スライス回転でコントロールする場合は、ボールの軌道より上にあるラケットが打点に向かって下がってきますし、ドライブボレーの場合はボール軌道の下からラケットフェースが上がってきます。

もう少し細かく見ると、スライス回転の場合はインパクトポイントより外側から内側に向かってラケットヘッドが動き、ドライブ回転の場合は内から外への動きが加わることがあります。
インパクトポイントでじっと待っているなんてことはないわけです。

さらに、フェース面の向きにしても、スライス回転の場合はインパクト前後で上に向くように変化し、ドライブボレーの場合も同じ面の角度を保ったままでスイングすることは通常ありません。
面の角度についても、スイング中に変化し続けているわけです。
仮に、フェースの中心にボールが当たったとしても、その一瞬の面の角度が正しくなければ、ネットやアウトにつながります。

というわけで、インパクトポイントにフェースの中心が来るのはほんの一瞬だけであり、その一瞬を外せば、ボールは中心から外れたところに当たります。
そのタイミングのズレがひどい場合はフレームに当たり、もっとひどい場合はフレームにも当たらないという結果になります。

大きくて安心というイメージほどは大きくない

ここで実際のフェースサイズを比較してみましょう。
現在一番多く売れている100平方インチのモデルとOSといわれる110平方インチのモデルを比べた場合、フェースの中心からフェースの外側までの距離の差は5mm前後です。

95と105、100と107くらいの1段階程度の差については、大体どのモデルもこんな感じです。
つまり、打点の中心からのズレという点で比較すると、OSはMPに比べて5mmくらいしか余計にカバーしてくれないのです。
95と115を比べると1cm程度(全幅で2cm)の差がありますが、通常、95と115のどちらにしようかと思い悩む方は少ないでしょう。

OSとMPのどちらにしようかと思い悩んだときは、両方のフェースを重ね合わせてみると良いでしょう。
「OSは大きくて安心」というイメージほどは大きくないということが分かると思います。

回転量が増えると当たりにくくなる

OSの大きさはそれほど安心できるレベルではないことに加えて、フェースの大きいラケット特有の不利な点があります。
ストロークでもボレーでも、フェースサイズの大きいラケットは打球方向に単純にスイングするとボールが飛びすぎることがあるため、一般的には、ラケットヘッドを打球方向から上か下にずらす傾向があります。
飛びのエネルギーを回転に変換することで、アウトを防ぐわけです。

そのため多くの場合、ストロークでは順回転の回転量を増やしてボールがアウトしないようにして、ボレーでも、フェースの大きいラケットではスライス回転の量を増やす必要があります。
それに対し、フェースの小さいラケットでは、それほど飛びを殺さなくても良いので、シンプルにポコンと当てられます。

つまり、大きいフェースのラケットほど、飛びをコントロールするために打球軌道とは大きく異なる角度で振らなければならないのです。
ということは、フェースの中心でボールをとらえることが難しくなるのです。

きちんと打てる範囲は限られている

また、フェースの大きなラケットでも、そのフェース全体でボールが打てると思ってしまうのは誤解です。
インパクトポイントがフェースの中心から横に5cmもズレればグリップがグリっと回されてしまうことが多く、そのときの打球はヘロヘロになるはずです。

現実的には、ヘロヘロでも返ればいいという場面もありますが、オフセンターヒットのヘロヘロの打球が相手コートに入る確率は通常より低いので、フェースサイズの違いによる差は出にくいかもしれません。

結論を言うと、MPとOS程度のサイズ差では、とてもタイミングのズレによるオフセンターヒットまでカバーすることはできないわけです。
フレームショットの多発に対して、フェースの大きさで対応しようとするのはあまり有効ではないようです。

ということで、フェースサイズの選択は当たりやすさで考えるのではなく、ボールを飛ばす力で選んだほうが現実的かもしれません。

プレイヤー心理の影響

ただ、プレイヤーの心理面では、「フェースが小さいと真ん中に当てるのが難しい」という意識がしっかりあるので、その意識によって当たりにくくなるということが実際にあります。

フェースが狭いというイメージが小さなストレスになって、それに対抗するために真ん中に当てようと、強く意識することになります。

そして、真ん中に当てようと意識するとラケット操作がていねいになります。
人間の特性として、何かをきちんとていねいにやろうとするとスピードが落ちるのが普通です。
つまり、真ん中に当てようとすると、ヘッドスピードが落ちてラケット操作がぎこちなくなるのです。

また、「ラケットをどうやって振ろうか」ということに意識が向くと、それによって時間的な調節がおろそかになり、タイミングが微妙にずれることがあります。
タイミングがずれるということは、オフセンターヒットになるわけで、真ん中に当てようと意識することで、かえって当たらない可能性が高まることになります。

インパクトポイントを「場所」でイメージして、そこをしっかり合わせようとすると、タイミング(時間)がずれやすくなり、かえって真ん中に当たりにくくことが多いのです。
振り方より、タイミングが大事ということですね。

よく見ようとすると当たらない

「ボールをよく見ようと努力すると、かえって当たらなくなる。」という声を聞くことがありますが、これは、「よく見よう、しっかり見よう」と頭で強く意識していることが原因です。

つまり、本当に欲しいのは「無心になってボールをよく見ている状態」なのですが、この場合は、頭の中で「そら見ろ!やれ見ろ!」とかけ声をかけているだけなので、かえってその声が邪魔して、ボールに対する集中状態に入れないのです。

心理的な食わず嫌い

ということで、フェースサイズの小さいラケットに尻込みせずに、平気な顔でトライすれば、何てことなく使えるはずです。
最近のモデルはフェースが小さくてもスイートエリアが広く、パワーも強化されているので、心理的な食わず嫌いさえなくなれば、多くのプレイヤーのラケットの選択対象はもっと拡がるでしょう。

ちなみに私自身は、95を使っても107を使っても、ゲーム中のフレームショットは相手の意表をつくための大切な武器として健在です。

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◇ボールが面からこぼれてネット
ガットが動かないと「食い付き感」が生まれないので、インパクトでボールをつかまえられずにポロッとこぼれてネットすることが多くなります。そう、あの惜しいネットは食いつかないガットのせいで、自分のせいではなかったかもしれないのです。
◇スピンで押さえ込めずに浮いてアウト
さらに、インパクトで動いたガットが戻るときに順回転がかかるので、ガットが戻らないと回転が安定せずスッポ抜けのアウトが出やすくなります。逆に、確実に回転がかかればショートクロスやスピンロブなどが打ちやすくなります。
◇打球の深さがバラバラ
ガットの動きが安定せずに、ボールインパクトで動いたり動かなかったり、戻ったり戻らなかったりすれば、フェースから打ち出される打球の角度が毎回変わるので、その影響で打ショットの深さが不安定になります。

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