「ボールを押す・つぶす」はダメ

テニスで実はやってはダメな練習課題
インパクトでボールを押す/つぶす

テニスの技術論などで「インパクトでボールを押すように」とか「ボールをつぶすように打つ」とかのワードが使われるケースがありますが、これは完全にダメなイメージです。

その理由はとても簡単で「間に合わないから」です。

人の神経伝達速度は意外に遅い

人が何かの刺激に反応して運動を開始するまでに要する時間は最短で千分の100秒とされています。
これは生理反応時間とも呼ばれ、陸上競技の短距離走の場合、スタートの合図から千分の100秒以内にスタートすると機械的にフライングと判定されます。
千分の100秒以内ではスタートできないはずなので、それより早くスタートしたときは、予測でスタートしたと見なされるわけです。
このように、人の神経伝達速度はあまり速くないようです。

それに対して、インパクトでボールがストリング面に接している時間は千分の4秒前後です。
つまり、プレイヤーがボールインパクトを感じて押そうとしたときには、すでにボールは飛んで行ってしまっているわけです。
なので、「押す」とか「つぶす」とかは物理的にできそうもありません。

もし、そういうことをやりたいと思ったら、陸上のフライングスタートと同じように、インパクトの前から力を入れ始めることが必要です。
でも、所詮、人が感知できないレベルの千分の4秒前後しかボールは接していないので、わずかに早かったりわずかに遅かったりということが起きやすく、押すタイミングをピッタリ合わせるのは容易ではないでしょう。

相手が必要

さらに、「押す」とか「つぶす」とかの行為を成立させるためには相手が必要です。
何もないところに力を入れて、押したりつぶしたりはできませんが、この場合の相手とは「ボールの手応え=打球衝撃」です。
これを「ボールから受ける抵抗」と言い換えることもできますが、押したりつぶしたりするには、そうした「何らかの抵抗」が必要です。

実はボールに押されている

でも、もしかすると、この「ボールから受ける抵抗」とはボールに押されているときに生まれる感覚ではないでしょうか。

基本的に、プレイヤーのスイングパワーがボールに効率良く伝わったときには手応えが軽くなるのが普通で、これは野球やゴルフも同じです。
ホームランの手応えは軽いのに対して、ボールの勢いを受け取ってしまうキャッチャーの手応えは重いわけです。
ゴルフでドライバーが良く飛んだときには空振りしたような感覚です。

あと出し状態

ですから、打球衝撃をしっかり感じるということはボールに押されているわけで、でも、先ほどの神経伝達速度の遅さを前提に考えると、「手応えを感じて力を入れたけれど、すでに相手はそこに居ない」という状態で、完全に「あと出し」の状態だと思われます。
力を入れて打っているのに打球が失速するのはこういう仕組みなのです。

ラケットのせい

力を入れられるほど打球衝撃が強いということは、プレイヤーのスイングパワーがボールに効率良く伝えられなかったことを示しています。
そして、プレイヤーのスイングパワーがボールに効率良く伝えられないのは、基本的に、ラケットに問題が有ると言えます。

ラケットのスイングウェイトが軽すぎたり、ストリング・セッティングがダメだったり、フレームの特性がプレイヤーに合っていなかったりすると、プレイヤーのスイングパワーがボールに効率良く伝わらず、伝わらない分だけ打球衝撃が強くなります。

そして、打球衝撃が強いと力を入れて打つようになり、押したりつぶしたりというインパクト感覚が生まれるようになるわけです。

ヘッドスピードが出ない

さらに、インパクトで力を入れてもボールには伝わらない上に、力を入れると筋肉が固まるのでヘッドスピードの減速につながります。

「押す」とか「つぶす」とかのインパクトイメージでは、インパクトポイントで力が入りますが、力を入れながら関節を柔らかく使って手を速く動かすのは無理なのでヘッドスピードが遅くなります。
打ち負けた結果の打球衝撃を、力を入れてブロックしている状態ではヘッドは走らないわけです。

打球の回転力とスピードの源泉はヘッドスピードなので、それが上がらないと押さえの効かない棒玉が出やすくなります。

アウトが多いとプレイヤーのパワーが過多であるかのように思ってしまうことがあるのですが、実は逆で、パワー不足なのです。
パワー不足でボールに押されるので、押し返すように力を入れて打つ結果、押さえが効かなくてスッポ抜けるというのがその仕組です。

打球感の軽いラケットを探し出して、高速で振り抜くことが強烈なショットの源泉です。
振り抜けないのはラケットが悪いと考えたほうが上達への近道です。

実はやらないほうが良い
練習課題が横行しています
ラケットを
早く引く
身体を早く
横に向ける
テイクバック
でヘッドを
下げる
テイクバック
を小さくする
どんなボールも
スピンをかける
ボールを
押す/つぶす
大きな
フォロースルー
GUT LIVEなんて必要ない![広告]
ガットの動きが悪いせいで起こるネットやアウトを、全部自分のせいだと思いたい人には、GUT LIVEは必要ありません。
◇ボールが面からこぼれてネット
ガットが動かないと「食い付き感」が生まれないので、インパクトでボールをつかまえられずにポロッとこぼれてネットすることが多くなります。そう、あの惜しいネットは食いつかないガットのせいで、自分のせいではなかったかもしれないのです。
◇スピンで押さえ込めずに浮いてアウト
さらに、インパクトで動いたガットが戻るときに順回転がかかるので、ガットが戻らないと回転が安定せずスッポ抜けのアウトが出やすくなります。逆に、確実に回転がかかればショートクロスやスピンロブなどが打ちやすくなります。
◇打球の深さがバラバラ
ガットの動きが安定せずに、ボールインパクトで動いたり動かなかったり、戻ったり戻らなかったりすれば、フェースから打ち出される打球の角度が毎回変わるので、その影響で打ショットの深さが不安定になります。

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