テニスの打ち方は一人ひとり違う
人の動きは
一人ひとり違う
以前のニュースで知ったのですが、防犯カメラなどで人の歩いている様子を撮影して、その映像を分析すれば、顔が判別できないくらいの荒い画像でも、指紋と同じように個人を特定できるそうです。
2~3歩あるけば判別可能ということですので、人の身体の動き方はそれほど個人個人でハッキリと違うわけで、運動の仕方は顔と同じように千差万別ということです。
現実問題として、人の身体の動きは一人ひとりで違うのですが、「自分の歩いている姿が他人とどう違うか」について具体的に知っている人はあまり多くはないでしょう。
さらに、歩くというシンプルな動作でさえそうなのですから、コート上を走り回ってボールを打っている自分の動きが他の人と具体的にどう違うかを把握している人は、ほとんど居ないと言って良いでしょう。
具体的な違いはさまざまありますが、その一部だけをピックアップしても、打っているときの重心の位置がどこにあるか、重心がいつどのように移動するか、体軸の回転と重心の関係はどうか、下半身からスタートした運動連鎖のつながり方はどうかなどがあって、それらが一人ひとり違うわけです。
こうしたことを前提に考えると「他人の動きをまねる危険性」に気が付きます。
上達するために優れたプレイヤーの動きをまねようとする取り組みは、昔からどんなスポーツにおいても行われてきたことですが、自分本来の動きではないものを取り入れてしまう危険性もあるわけです。
本来の自分の動きと違う動きを無理やり取り入れようとすると、運動がギクシャクしてパワー効率が下がり、運動の正確さも低下します。
つまり、ショットの威力が落ちて、バラツキも大きくなるということです。
ですから、やろうとした動きがいつまでたっても身に付かず、ギクシャクした感じが残ってしまう場合は、早めにその取り組みを放棄したほうが賢明です。
自分本来の運動パターンではない動きは何度繰り返しても違和感が残るのに対して、自分の運動パターンの動きはすんなり吸収できるはずで、それほど意識しなくてもすぐに実行できるようになります。
ですから、他人を指導する立場にある方は注意が必要です。
一見、他人のスイングが奇妙に見える場合でも、その人にとっては自然な動きであるという可能性もあるので、むやみに矯正するのは良くないかもしれません。
「身体の使い方はこれが正しい」という考えを他人に押し付けるのはアブナイ面があるわけです。
特に、ある人の動きが自分の運動パターンと大きく違う場合に、その動きがとても奇妙に見えるようなので、自分としてはつい直したくなってしまうわけですが、自分の動きをむやみに相手に押し付けても逆効果になることもあります。
運動効率が低い場合、言い換えれば、一生懸命打っていてもヘロヘロの打球しか出ていない場合は何かがおかしいわけですが、運動効率が良い場合、つまり、少ない運動負荷で勢いのある打球が出ている場合は、多少動きが変に見えても、その人にとってはそれで良いと考えたほうがリスクが少ないでしょう。