秋口からの肘や肩の故障について
テニスで発生しやすい
秋口からの肘や肩の故障について
【質問】腕や肩の故障について
秋口から、プレー後に腕や肩に少し痛みが出るようになってきました。何か対策はあるでしょうか。
【回答】
テニスは、利き腕を酷使するスポーツですので、手首や肘、肩の故障が発生しやすいのですが、痛んだ身体に一番良いのは治療に専念することです。
医師の治療を受けなくても、人には自然治癒という自動再生機能がありますので、テニスを休むというのが最も賢い選択です。
でも、この賢い選択は通常、選択肢には入りません。
テニスが日常生活に組み込まれている方にとっては、この選択肢は最初から選択の対象にならないからです。
既に発生した故障に対する対症療法的なケア方法はいろいろあるでしょうが、プレーし続ける以上、大元の故障の発生を抑制することを優先されたほうが良いかもしれません。
この場合、故障の発生源として考えられるのは、気温低下とスイングイメージの二つです。
気温の低下でボールの飛びが悪くなる
寒くなる時期に発生した腕や肩の痛みについては、季節のせいだと考えたほうが良いかもしれません。
時期的に何か不都合なことが発生した場合、他に目立つ変動要素がなければ、気温変化の影響を疑ってみると良いでしょう。
というのも、ボールの飛びは気温の影響を強く受けるからです。
ボールの性能試験をする際と大きな大会で使用する際には、使用前に一定温度(20℃)に24時間置くことが定められています。それだけ、温度の影響を受けるということです。
基本的に、気温が高いほど良く飛んで、また、気圧が低いほど良く飛びます。
ですから、夏の高原でテニスをすると、打球がコートに入らなくて当たり前というような状態になります。
30℃を越える真夏からだんだんと気温が下がってくると、それにつれてボールの飛びが悪くなってきます。
それに対してプレイヤーは、イメージどおりの打球の勢いが出にくくなるので、運動を強めて強い打球を打とうとし始めるために、自分から故障を呼び込むような状態になりやすいといえます。
実際に、テニスエルボーは秋口に発症して、冬場は持ち越して、春になると改善するというケースが多いのですが、これは気温の推移とリンクしています。
対策としては、気温の低下に応じて張上の硬さを下げていけば、打球が飛ばないことによる弊害を抑えることができるでしょう。
ポリを使っている場合は、それをナイロンに替えるだけでも改善が見込めるでしょう。
スイングイメージの問題
もう一つの原因と考えられるのは、「強く打つ」というスイングイメージです。
強打を身上とするプレイヤーにありがちなインパクトイメージで、「強く当てる」とか「力を入れて強く打つ」というのがありますが、もし、そういうイメージでプレーされている場合は、イメージの修正が必要です。
「強く打つ」というイメージと対になっているのが「強い手応え」で、これが無いと強い力を入れることができません。
強い手応えを予想するから力が入るのですが、このスイングイメージでは、故障の原因を自分で作り出していることになります。
プレイヤーの運動はラケットのヘッドスピードとなって打球に伝えられるのですが、ラケット側の運動エネルギーがうまく打球に伝わった場合、手応えは無くなります。
現実的に、全部無くなることはありませんが、伝達効率が良ければ、手応え=打球衝撃が減少していきます。
ですから、インパクトポイントをスルッと通りぬけたような感覚で打てたときに伸びのある打球が出て、ガツンというしっかりした手応えが感じられたときには、たとえ初速は速くても伸びが出ずに失速します。
インパクトでしっかりした手応えがあったときに強い打球が打てていると思っている方が意外に多いのですが、これはテニスプレイヤーだけに見られる傾向で、他の球技ではあり得ないインパクトイメージです。
ストリング・セッティングがハードすぎたり、ラケットが合わなかったりすると、インパクトで手応えが生まれ、それに対して力を入れるというスイングイメージになるようですが、これでは、ダメージの蓄積を促進することになります。
インパクトポイントをスルッと通りぬけるような感覚で打てるストリング・セッティングにして、そういうイメージでスイングすると、故障を防ぎやすいでしょう。