現実からの幽体離脱
試合になると緊張して実力が出せない方に
「今、この瞬間!」から意識が離脱する
先のことを考える
人は誰でも、これから起きることを予想したり、想像したりすることができます。
でも、プレーしているときにそれをやると最悪の結果が待っています。
なぜなら、プレー中は高速で飛び回るボールに対して反射的に動かねばならないのですが、そんな「今、この瞬間!」だけで手一杯のときに「先のこと」が頭にあったら身体の反応が鈍くなります。
「そんなことを自分がやるはずはない」と考える人は多いかもしれませんが、実は結構みんなやっています。
大事な試合では「勝ちたい」と思うのが普通ですが、これがまさにそれで、「この試合に勝つ」というのは「今、この瞬間!」ではなくちょっと「先のこと」です。
「絶対に負けたくない」というのも同様です。
「こんな相手に負けたらみっともない」というのはもっと悪い状態で、「先のこと」であるのと同時に「マイナスのイメージ」です。
頭の中にそんなものが存在したら反射的に動けるはずはありません。
ゲームカウント4-4でサーティーオールのときに、「このポイントは是が非でも取りたい」というのも同じです。
「飛び回るボールを無我夢中で追いかける状態」に入り込むためには「勝利への意欲」も「ただの雑念」でしかありません。
「今、この瞬間!」の反射的な反応が勝負の分かれ目なのに、次のポイントの結果や試合の結末などの「先のこと」に意識を向けるのは、「今、この瞬間!」へ意識レベルを低下させることに直結します。
基本的に、プレーの合間には何を考えても良いのですが、でも、次のプレーが開始するしばらく前から頭の中を「シーン」とした状態にセットすることが必要です。
そのために有効なのは、コート上のどこかに必ずあるボールを見つめることです。
それも、ただボーッと見るのではなくボールの文字と縫い目にズームインするようにギュッと見つめてください。
その結果、ザワザワした中で、コートに弾むボールの音だけしか聞こえないくらいの状態になればOKです。
ヘッドアップ
次のポイントのことより、もっと直近の未来である「次のショットの狙い」についても同じで、ボールが飛んで来るときにそれが頭にあると、ボールが飛んで来ている現実から意識が離れた状態になるので、身体の反応が狂います。
これが「意識のヘッドアップ」という状態で、ボールを見ているようで実はしっかり見ていないわけです。
目の前に有るボールから意識がちょっとでも外れると何も良いことはありません。
狙わないのはテニスではありませんが、ボールが飛んで来ているときに狙いのことを思い浮かべるのは「気が散っているのと同じ」なので、ボールが飛んでくる前に狙いの設定を済ませておく必要があるわけです。
過ぎたことを考える
先のことではなく、過ぎたことを考えるというケースもありがちです。
一番まずいのは、「こんなミスをしてみっともない」と思うことで、「ペアにすまない」というのも同じです。
飛んで来るボールに対してタイミング良く動くために反射神経を研ぎ澄まさなければならないときに、過去をふり返るのは最悪です。
どんなみっともないミスをしても、こんなのはテニスでは普通によくあることだと平気で受け流すことが必要で、どんな恥ずかしい事実でも過ぎてしまえば過去のことです。
さらに、ミスショットを反省するはもっとダメで、「あのショットはこうやって打てば良かった」と考えても、前回と全く同じ状況は二度と訪れません。
とはいっても、ミスを反省するのは習慣になっているはずなので、反省しない練習が必要です。
打球がとんでもない方向に飛んだ後に「あぁ、みっともない、次はちゃんと打とう」などと考えるのをすぐにやめて、次のボールが飛んでくる前に、次のショットの軌道イメージを作っておく訓練をしてください。
コート上では「今、目の前にあるボールに意識を集中させる」こと以外は全て「排除すべき雑念」です。
誤解を解くのが一番大事
試合になると実力が発揮できなくなる人は、「簡単なことも満足にできなくなる自分」にイライラして腹を立てることが多いのですが、実は、これこそが大きな誤解です。
テニスは「飛んで来るボールを打ち返し続けるスポーツ」なので、それほど速くないボールを空振りしても、ちっとも不思議ではないくらいに、実はとても難しいのです。
その難しいことを、普段の練習では「無意識的」にやっているために「本人が難しく感じていないだけ」で、実際には、意識での確認作業が追いつかないくらいのとても高度な反射運動を連続させながらボールを打っているのです。
それを、「簡単なこと」だと思うから「できない自分が腹立たしい」のですが、単なる誤解なので、別にメンタルが弱いわけではないわけです。
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