テニスと「あがり症」の関係
テニスと「あがり症」の関係
テニスというスポーツの本質と「あがる」という症状は相性がピッタリのようで、ほんの少し「あがった」だけでプレーがボロボロになるのは、テニスが集中力と反射でボールを打つスポーツだからです。
「あがる」ことは、集中力と反射を瞬時に台無しにする破壊力を持っています。
あがる人は多い
大勢の人を前にして何かを言わねばならないときに、頭の中が真っ白になったという経験をしたことがある方は実際に少なくないと思われます。
いつも必ずそうなるわけではないけれど、何かのキッカケで「あがる」ことがあるという方を含めると、ほとんどの方がそういう経験をしているのではないでしょうか。
ただ、このページを見に来た方は、そういう軽度のあがり症ではなく、緊張する場面になるといつも必ずあがってしまうという重度の方だと思われます。
あがっている自分を客観視しようとする
あがりやすい人は、自分があがり始めたときにすぐわかるようで、「あれっ、ちょっと浮足立っているかも」と感じるわけです。
でも、こんなふうに、あがっている自分を客観視しようとするのは、一見すると冷静な対応のように見えて、実はあがり始めた状態なのです。
自分があがっていることに気付くことで、そこから、本格的に「あがっている状態」に入り込んでいくわけです。
そして、このことが、「あがる」という状態の基本的な仕組みのようです。
できるはずのことができずに終わる
あがっていても、やるべきことがちゃんとできていれば問題はないのですが、そういうケースは非常にまれで、だいたいボロボロになるのが普通です。
そして、あがりやすい人が自己嫌悪するのは、あがると自分の能力が発揮できなくなってしまうことです。
言いたかったことの半分も表現できず、できるはずのことができずに終わったりすると後悔やイライラがたまります。
テニスの試合では、まるで自分ではないような状態になって、ほとんど何もできずに負けてしまうわけです。
自分を客観視することがあがることの本質
あがりやすい人ほど、「自分があがり始めているかどうかを敏感に感じ取る」ようですが、これが「あがりやすくなる原因」です。
つまり、「自分を客観視すること」が「あがることの本質」なのです。
自分がちゃんとできているかどうかを冷静かつ客観的に把握しようとすることが、実は、「あがる」ことそのものなのです。
客観視するのは良いこと!?
自分を客観視するというのは自分で自分を評価することですが、自分自身を外側から見ることなので、自分の身体から意識が遊離した状態だと言えます。
もちろん、人の意識は脳の活動なので、物理的には意識が身体と離れることはないのですが、イメージや空想で自分の身体の外に視点を設定して、そこから見た自分をあれこれ想像・分析するわけです。
そして、こうした意識活動は誰でも普通にやることなのですが、多くの場合、社会生活を営む上で人として必要かつ大切なことだとされているようです。
幽体離脱
自分を客観視するのは、魂が肉体から抜け出して外から自分を見ていることになるので、幽体離脱のような状態だとも言えます。
「あがる」を文字どおりの「上昇する」という意味で受け取ると、意識が身体から離れて自分を上から俯瞰的に眺めている様子をイメージしやすいかもしれません。
車の運転に例えると、自分が運転している状態から抜け出して、車の動きを外から見ているような状態です。
コントロールを放棄すること
世の中では、ストレスや悩みを解消したり、複雑な問題を解決したりするには、自分を客観視することが「良いこと」だと判断されているケースが多いようです。
でも、スポーツでは、というより、特にテニスでは絶対にやってはいけないと断言して良いでしょう。
なぜなら、意識が身体から離れた状態では、一体誰が身体の動きをコントロールするのでしょうか。
車の動きを外から見ているような状態では車の運転はできないはずです。
考えごとをしているときであればそれでも良いのですが、プレー中にそんな状態になっていたら身体がスムーズに動くはずはなく、走行中の車であればコントロールを失ってしまいます。
自分を客観的に見ているときは自分が自分の中に入っていないので、自分の身体が自分のものではないような感覚に陥るわけですが、そんなときに身体がきちんと動くはずはありません。
隠れた落とし穴は「先行ビジョン」
人は、以下のような思いが頭にあるときに、自分のやっていることを客観的に見つめ始めるようです。
「他人の評価が気になる」
「自分はこれくらいのことは普通にできるはず」
「みんなの期待に応えたい」
「やるべきことをきちんとこなそう」
「みっともない結果は避けたい」
「きちんとこなせばみんなが賞賛してくれる」
「勝てばみんなが自分の実力を認めてくれる」
つまり、自分はこういう評価を受けたいという「先行ビジョン」があるわけです。
自己評価がドツボの入口
ど田舎の荒野にあるコートで対戦相手以外は周りに誰も居ない環境と、知り合いが大勢見ている環境とではあがり方にも違いが出るはずですが、その原因は「他人の評価」です。
つまり、「他人の評価」を気にして、その内容を自分が想像することで「自己評価モード」に入ってしまうわけです。
さらに、自分はもっと評価されるべきだと思っているときほど自分の評価が気になるため、自分で自分を評価する「自己評価モード」に入ってしまいやすいようです。
そして、「自己評価モード」=「幽体離脱」なので、それが始まったとたんに身体はうまく動かなくなります。
「主体的に行動する自分」が機能低下を起こす
自分自身を「自分を客観的に見る自分」と「主体的に行動する自分」の二つに分けた場合、何かを一生懸命やっているときや、何かに没頭しているときは「自分を客観的に見る自分」は消えて、「主体的に行動する自分」のみで動いている状態になります。
でも、自己評価モードに入って「自分を客観的に見る自分」が優勢になると、「主体的に行動する自分」が放置されて機能が低下します。
車を降りて外から車を眺めている状態で、車が良い動きをするはずはないわけです。
完璧な「ジコチュー状態」を目指す
最初に「先行ビジョン」がある
⇒「先行ビジョン」どおりになっているかが気になる
⇒自己評価による客観視によって幽体離脱が始まる
⇒身体がコントロールを失ってうまく動かない
⇒「先行ビジョン」から大きく外れたことがわかる
⇒強制的に「ちゃんとした状態」に戻そうとする
⇒幽体離脱が終わらない限り身体はうまく動かない
という仕組みなので、このループから抜け出すには、「客観的で冷静な視点」をゴミ箱に放り込んで、完璧な「ジコチュー状態」に入り込むことが必要です。
冷静になって、自分を客観的に見つめようとするのが「あがっている状態」なので、「無我夢中の状態」を取り戻すことが最優先です。
あがらないようにしようとするからパフォーマンスが下がる
自分の身体が思うように動かなくてドツボにハマっているときには、「冷静になってちゃんとやろう!」などと思うのが普通ですが、ここまで書いてきたように、こうした努力では自分からドツボにハマり直すことになります。
プレー中に必要なのは「冷静に自分を見つめること」ではなく「夢中になること」なので、自分の身体に戻る必要があるわけです。
自分の身体との一体感を取り戻す
幽体離脱は心と身体が遊離した状態なので、そこから抜け出すには、自分の意識と身体の一体感を取り戻すことが必要です。
「心ここにあらず」の状態ではなく、心がちゃんと身体の中にある状態を取り戻すには、最初に「体感覚」の復元に取り組んでください。
「自分の身体が自分のものではないような感覚」に陥っている状態では、「体感覚」(身体に伝わる感覚)がマヒしているので、それがクリアに感じ取れるようになるよう、以下のような方法をお試しください。
呼吸に意識を向ける
深く吸ってゆっくり吐く等、呼吸音に意識を向けてください。
これは別に、落ち着くためではありません。身体の音を聞くためです。
「夢中になる」ためのステップなので、心を落ち着けたりする必要は全くありません。
呼吸をしっかり感じ取るだけでOKです。
加重ポイントを探る
立っている場合は、自分の体重がどの足のどの部分にかかっているかを探って感じ取ってください。
その場所が少し動いてもわかるくらいに敏感に感じ取ってください。
触覚の復元
指をこすり合わせてその触感を感じ取ったり、ラケットのグリップやボールを握りしめてその反発圧力を感じたりして、自分の感覚が研ぎ澄まされるようにトライしてみてください。
感覚がダイレクトになって自分の身体が自分のものになったと確認できたら、次は視覚と聴覚です。
視覚の復元
視覚の復元の対象物はボールです。
ボールをただ眺めるのではなく、文字やぬい目をみて回転状態を観察して、その中で瞬間的にボール表面のフェルトの毛が見える一瞬を探してください。
試合会場では事前の練習も制限されており、さらに、試合中にあがっている状態では中断して何かをやるわけにもいかないのですが、ポイントの合間でも、ボールをコートにつくくらいはできるでしょう。
ボールを地面につきながら、その間ずっとボールを見続けて、落ちていくボールが弾んで戻ってくる前の着地の瞬間をしっかり見てください。
あるいは、拾ったボールを相手に送る際も、対戦相手の手に収まるまで飛んでいくボールをよく見てください。
聴覚の復元
聴覚の復元の対象物もボールです。
視覚の復元の中でやったことに「ボールの音を聞き取る」も加えて、その結果、ザワザワした中でもボール以外の音が聞こえない状態に入ってください。
そして、視覚と聴覚の復元作業に入ったら、「体感覚」は視覚と聴覚のジャマになるので、一切意識から外してください。
こうした過程で頭の中が空っぽになれば成功なのですが、そこでいろいろな課題を思い出そうとすると、集中が途切れます。
無我夢中がベスト
最初に書いたように、テニスは高度な集中力と反射的な動きでプレーするスポーツです。
頭の中でわずかに「思考」が働くだけで「高度な集中力と反射的な動き」のジャマになるのに、自分の身体から抜け出した思考状態ではプレーにならないわけです。
自分を冷静に見つめるのは試合が終わった後で好きなだけやれば良いことで、試合中に最適な心理状態は「無我夢中」です。
急にドヘタになるスポーツ
テニスは基本的に、練習を積んである程度打てるようになった段階でも、ズブの素人のようなミスが出るスポーツです。
長年積み重ねた技術があっても、そのときの集中状態次第でボールが全く打てなくなることは別段珍しくありません。
そういうときのミスは、それまでの経験年数が信じられないくらいのひどかったりして、昨日今日テニスを初めた人のように思えるかもしれません。
ど初心者のようなミス
テニスは高度な集中力を必要とするスポーツなので、それが途切れたときは全くショットにならないのが当たり前なのに、集中力ではなく技術力でプレーしていると思っている人は、できないときに恥ずかしいと感じるわけです。
あがっているときは自分を客観的に見ているので、空振りしたときに「ど初心者のようなミスだ!」と思ってしまうのですが、集中してプレーしているときは、空振りはただの空振りで、それ以上でも以下でもありません。
自分を客観視していなければ、「ど初心者のようなミス」という「客観的な評価」は出て来ないわけです。
「みっともない」とか「恥ずかしい」とか思ったら、幽体離脱を疑ってください。
試合の流れとか戦況も自己評価の一種
テニスは、偶発的なことでポイントが決まることが少なくないスポーツなので、ゲームの流れや戦況で次のポイントが決まるわけではありません。
あくまで、次はどうなるかわからない、ここから先はどうなるかわからないのです。
0―5で負けていてるからといって、敗戦が決まったわけではなく、次のポイントからどうなるかは誰にもわかりません。
ただ、やっている本人が「この流れでは負けだな」と思えば、そのとおりになる可能性は高いでしょう。
負けそうだと思ったとたんに集中力がゆるむので、その状態ではまともなプレーはできずに負けが確定するわけです。
試合の流れで負けが決まったのではなく、心理の中で負けが決まったということです。
勝手な予想
ゲームの流れや戦況は、今の状況を客観的に把握しようとするプレイヤーの心理の中だけにあることで、事実や現実ではありません。
なので、その影響も上記のように心理的なことに限られます。
0-5になったというのが事実で、だから負けそうだと考えるのも妥当なのですが、でも、負けそうだというのは単なる想像、あるいは、予想であって事実ではありません。
未来の予想をして気持ちが暗くなるのはプレイヤーの勝手ですが、そうした状況に「追い込まれた」と思うのは勘違いで、あくまで、自分が自分を頭の中で勝手に追い込んでいるだけです。
ですから、これからどうなるかわからないのに、勝手な予想で喜んだり不安になったりしてもムダなので、試合中に先のことを考えるのはやめたほうが賢明です。
現状を第三者的に客観視する
緊張する局面や不利な状況では、客観的に状況を把握して適切な対応をしようと考えるわけですが、これがあまり良くありません。
現状を第三者的に客観視することで、観客のような視点になって、自分の目の前の現実から意識が離れてしまうからです。
自分とボールという二者でプレーしている最中に、第三者の視点が入り込むとプレーのジャマになるわけです。
頭の中を真っ白に!
後悔するような負け方は、ほとんどの場合、相手が圧倒的に強かったからではなく、自分がミスを連発したからです。
そして、ミスを連発した原因は集中力の欠如で、言い換えれば、頭の中が雑念まみれの状態だったからです。
その雑念とは思考の全てで、状況の把握や対策の検討なども含まれます。
ポイントの合間であれば何を考えても良いのですが、打ち合いが始まる前には、頭の中が真っ白になっていなければ、きちんとボールは打てません。
目指すべきは、夢中でボールを追いかけ続けて「気がついたら試合が終わっていた」という状態です。
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ズバリその答えは「打球感を無くすこと」です。「打球衝撃を最小限にするセッティング」が実現すれば「インパクトでヘッドが走る状態」になります。そして、手応えが軽くなってヘッドが走れば打球が伸びて沈むようになり、相手コートで弾んでからの失速が減ります。それくらい、適切なガット張りは大切なのです。
試合で実力が発揮できないのは ちょっとした勘違いが原因です |
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試合で緊張して 実力が発揮 できない人に |
テニスと 「あがり症」 の関係 |
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試合で緊張 ラケットの 影響が大きい |
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試合で緊張 「現実」から 意識が遊離 |