伸びる打球の仕組み—その1

テニスのショット分析
伸びる打球の仕組み—その1

ボールは減速する

伸びるというタイトルで最初から減速するというのは変な話ですが、でも、これが物理的な現実です。
野球では、良い投手の投げた球は、打者の手元で伸びると言われます。
テニスでも「伸びのある打球」という言葉は、よく使われます。
ですが、物理的に言えば、打たれたボールが伸びることは絶対にありません。
投手の投げたボールが打者に向かって飛んでいくエネルギーは、投手が投げた時に加えられたものだけであり、その後に、新たにエネルギーが加えられることはありません。
テニスのボールも、その飛んでいくエネルギーはラケットと衝突した時に得られるだけですので、ボールにエンジンでも付いていない限り、その後に加速することはあり得ないのです。
打たれたボールは惰性(慣性)で飛んでいくだけですので、空気抵抗によって減速し、重力の影響を受けて落ちていきます。

弾んで減速する

テニスのストロークでは、一度コートに落ちて弾んできたボールを打ちます。
その時に、飛んできたボールの速度と、弾んだ後のボールの速度が大きく異なることに気づいているプレイヤーは意外に少ないのですが、皆様はいかがでしょうか。
飛んできたボールはコートと接触することで大きく減速し、飛んできた時の半分くらいのスピードになります。

減速すると感じていない

それなのに、それほど大きく減速しているとは、多くのテニスプレイヤーが感じていません。
弾んだ後も飛んできた時と同じようなスピードだと感じてしまうのですが、それは、着地後に減速することが視覚的に予測されているからです。
頭で考えて予測しているのではなく、あくまで「視覚的に」です。目の機能に織り込み済みということです。

視覚的予測が訓練されている

プレー経験を積んだプレイヤーは、数千回、数万回のレベルで、コートに弾んだボールを打ってきていますので、弾んで大きく減速したボールに対して、簡単に目の焦点を合わせることができます。
そうした視覚的予測の能力を、経験の蓄積によって獲得してきたわけです。
それができていないと弾んだ後のボールに焦点が合いにくくなり、ボールをきちんととらえにくくなります。
うまくボールが見えないという状態で、長い間練習を休むとそういう感じになりますね。

この「減速に対する視覚的予測」が「伸びのある打球」のキーポイントなのですが、その仕組みをコートサーフェスの違いを例にとって説明します。

摩擦抵抗と弾んだ後の速さ

コートの表面材はその種類毎に摩擦の大きさが異なります。
ハードコートなどの摩擦が小さいコートでは、弾んだ後の球速が速くなり、オムニやクレーコートなどの摩擦が大きいコートでは、弾んだ後の球速は遅くなります。
先ほどの減速という面から見ると、速いコートは摩擦抵抗が小さいため、減速が少ないということで、逆に、遅いコートは減速が大きいということです。

減速が予想より小さいと加速したように見える

遅いコートで打ち慣れていると、初めて速いコートに行った時に振り遅れます。
その時に、プレイヤーは、ボールが弾んでから加速したように感じます。
特殊なケースですが、体育館などの木の床ではまさにそういう感覚になります。
それほど速い打球でなくても、弾んでからビュッという感じで飛んでくるのです。
そういう場合でも、弾んだボールのスピードが飛んできた時より速くなることは絶対にあり得ないわけで、弾んだ後の減速が予想より小さい時に、加速したように見えてしまうのです。

【着地による減速が少ない⇒加速したように見える⇒伸びのある打球】という図式です。

コートサーフェスの違いによって打球の伸びに感覚的な違いが生じるのが分かりましたが、プレイヤーによっても打球の伸びが大きく異なる場合があります。

同じコートでプレーしていても、伸びのある打球とそうでもない打球があるのです。
減速率という面から見ると、着地による減速の少ない打球が伸びのある打球です。

打球の伸びで返球の厳しさが変わる

相手の打球に伸びがあると打ち返しにくく、攻撃的な返球がしにくいのですが、その反対に、伸びのない打球は簡単に打ち返せて、狙いどおりのところに打ち込みやすくなります。
その結果、伸びのある打球の持ち主は、相手の返球がいつもイージーなところに返ってくるため、さらに厳しいショットが打てるのでポイントが取りやすく、伸びのない打球の持ち主は相手の返球がいつも厳しいので、忙しく走り回らなければならなくなります。

伸びは勝ちやすさに影響する

アプローチショットで前に出てパスされたたとき、ボレーの反応が遅かったと悔やむより、アプローチが「行っていなかった」と考えたほうが実質的な改善につながるでしょう。
伸びのないアプローチだったから厳しいところに打ち込まれたわけで、そういう場合は、相手の厳しい返球をボレーする練習をするより、厳しいパスを打たれた原因である「勢いのないアプローチショット」を改善することが先決なわけです。

打球が伸びているかどうか、ボールが行っているかどうかは、勝ちやすさ負けやすさに大きな影響があるのです。

そして、着地時の減速に影響するのはボールの回転と軌道です。

次回はそれについてお伝えしたいと思います。⇒「テニスのショット分析/伸びる打球の仕組み——その2

GUT LIVEなんて必要ない![広告]
ガットの動きが悪いせいで起こるネットやアウトを、全部自分のせいだと思いたい人には、GUT LIVEは必要ありません。
◇ボールが面からこぼれてネット
ガットが動かないと「食い付き感」が生まれないので、インパクトでボールをつかまえられずにポロッとこぼれてネットすることが多くなります。そう、あの惜しいネットは食いつかないガットのせいで、自分のせいではなかったかもしれないのです。
◇スピンで押さえ込めずに浮いてアウト
さらに、インパクトで動いたガットが戻るときに順回転がかかるので、ガットが戻らないと回転が安定せずスッポ抜けのアウトが出やすくなります。逆に、確実に回転がかかればショートクロスやスピンロブなどが打ちやすくなります。
◇打球の深さがバラバラ
ガットの動きが安定せずに、ボールインパクトで動いたり動かなかったり、戻ったり戻らなかったりすれば、フェースから打ち出される打球の角度が毎回変わるので、その影響で打ショットの深さが不安定になります。

自分のせいではないことで損をしたくないと思ったらこちら!↓Click!

発売以来10000個以上売れています。
リピーター増加中!

関連記事一覧