ガット張りとプレースタイル
好みに合わせたセッティングでは
プレーの幅が限定されることがある
前回の記事で、ハードな打ち合いには硬いほうが良くて、遅い打ち合いでは柔らかいほうが良いと書きましたが、そうはいっても、実際の試合では速いボールもあれば遅いボールもあるため、インパクトの強さは毎回変わります。
ですから、速いボールにも遅いボールにも対応できる硬さが欲しいわけで、どちらかに片寄ったセッティングではプレーも片寄ってしまいます。
実際問題として、ハードヒッターは硬めのセッティングを好み、シコリ型のプレイヤーは柔らかいセッティングを好む傾向があるのですが、そうした好み重視のセッティングを選ぶことでプレーの幅が狭められてしまうということがあります。
硬すぎるセッティングを選んでいると、弱いインパクトではボールをつかまえられないので、常に強く打たねばならなくなって一本調子のプレーになりやすいでしょう。
ショートラリー練習が苦手だという場合などはこのケースが多く、そういう状態では、実際のゲームでもショートクロスやスピンロブなどの柔らかいインパクトのショットがあまり選択肢に入らないようです。
逆のケースで、ストリングを柔らか目に張っていると、強いインパクトではストリングの戻りが間に合わなくなり、打球を押さえにくくなるため、コントロール重視の柔らかいショットを多用するスタイルになりやすい傾向があるようです。
バコラーとシコラーはプレイヤー自身の選択ではなく、選んだストリング・セッティングによって自動的に決まってしまうという側面もあるわけです。
◆自分の打球レベルに合ったセッティングを探す
強いインパクトに対応するためのストリング・セッティングと、弱いインパクトに対応するためのストリング・セッティングを、それぞれ別に用意するのであれば話は簡単なのですが、1本でその両方に同時に対応できるストリング・セッティングを探すとなると微妙な調整が必要になります。
そして、インパクトの強さはプロ選手と一般プレイヤーでは大きく違いますが、一般プレイヤーの中でも人それぞれです。
強打のレベルも人それぞれで違うということです。
強打とソフトインパクトのコントロールショットというように言葉上で分類しても、実際のスピードレベルは人それぞれなので、自分が普通に打ったときのスピードを基準にしてセッティングを決めれば、実際の打球がそれより強かったり弱かったりしても何とか対応できる、というような考え方をしてはいかがでしょうか。
自分の強打とコントロールショットの中間に合わせたセッティングにするわけです。
でも、その中間から少しずれて、ハード目に寄ってしまうとショートクロスが入らなくなり、ソフト目に寄ってしまうと打ち込んだショットが押さえ切れずに浮いてしまうでしょう。
ですから、多彩なショットが打てるセッティングを見つけるのは簡単ではないようです。
◆インパクトの強さは自分だけでは決められない
さらに、インパクトの強さは自分だけでは決められず、飛んで来るボールの速度によって変わります。
インパクトはボールとラケットの衝突なので、ボールが遅ければ、その分、インパクトの強さも低下するわけです。
ですから、ハードヒッター同士で打ち合っているときは良いショットが打てているのに、相手が弱いボールでつなげてくると打球が狙ったところに行かずにバラついてしまうのは、インパクトが弱くなるせいでスナップバックが発生しなくなるからかもしれません。
もしそうであれば、女性やシコラーを相手にするときは、ストリング・セッティングを少し柔らかくしたほうが、ボールをつかまえる感覚が復活するでしょう。
いつもの練習仲間の打球は、自分と同じスピードレベルであることが多いので、対外的な試合になると調子が出ないという場合は、相手の打球スピードがいつもと違うことが原因かもしれません。
一般プレイヤーの場合、緊張する試合では身長になって打球スピードが遅くなることが多いので、いつもより遅い打球スピードを前提にしてストリング・セッティングを調整するという考え方もあります。
◆コートによっても変わる
そしてさらに、インパクトの強さはコートサーフェスによっても変わります。
速いコートは着地後の減速が少ないので、打つ前のボールスピードが平均的に速くなり、その結果、インパクトの強さも増すわけです。
ですから、速いコートは硬めのセッティング、遅いコートは柔らかいセッティングというのが基本です。
自分のプレーが変わらなくても、相手の打球やコートサーフェスによってインパクトの強さは変わるので、それに対応したラケットを使わないと、いつものプレーがしにくくなるわけです。
◆スイングウェイト調整
インパクトの強さに対応するには、ラケットのスイングウェイトにも手を付ける必要があるかもしれません。
ボールの重さは常に一定ですが、飛んで来るスピードによって、そのエネルギー量は変わるので、ラケット側のエネルギー量の基盤であるスイングウェイトを調節する必要が出てくるときがあります。
ハードコートでハードヒッターを相手にするときは、スイングウェイトは重くしたほうが楽ですが、同じラケットをクレーコートでシコラーを相手にするときに使うと、インパクト感がわかりにくくなるでしょう。
◆おサイフと相談
テニスは、相手やプレー環境の影響が大きいので、違う環境で違うプレイヤーを相手にしていつものようにプレーしようとすれば、いつもと違うラケットが必要になるわけです。
当然、選択肢はたくさん用意したほうが、個々の異なる状況に合いやすくなるのですが、たくさんのラケットを用意するのはおサイフが大変なので、どこで折り合いを付けるかということになります。
とりあえず、最低でも2本はないと、比べられないので何が良いのかわかりません。
1本では良い状態から外れていってもそれに気付くのは難しいわけです。
できれば、5本くらいを目安にお考えいただければ、テニスが快適になるだけでなく、テニスワンもとても幸せになります。
Click!⇒テニスのガット張りの理想はズバリ「打球感を無くすこと」
ガット張りの理想は「打球感を無くすこと」です。「打球衝撃が最小限になるセッティング」が実現すれば、インパクトでヘッドが走る状態になって「伸びて沈む打球」が手に入ります。ガット張りは戦力を左右する大切な要素であり、打球の伸びが勝敗に直結します…
Click!⇒テニスワンのガット張りについて
テニスワンは、快適にプレーできるガット張りの硬さの範囲を10,000回以上の実証実験によって把握してきました。故障の危険のある「推奨テンション」の呪縛から早く逃れて、「伸びて沈む打球」を手に入れるために快適に振り抜ける硬さを目指してください…
知らないと損
ガットについての情報
ガット張りについての40件以上の記事が以下の4つのジャンルに分類されています。
Click!⇒ガット張りで損をする
実際にボールを打つのはガットで、フレームはガットのアクションを受け取るだけの存在なので、ラケットのパフォーマンスの主役はガットです。なので、ガット張りを軽視すると、気づかないうちにプレー上で損をすることになります。このコーナーでは、そうした不利益の具体例を紹介しています。
Click!⇒ガットの種類の選び方
テニスガットについての記事を集めたコーナーです。ガットの基本知識や素材や太さの選び方などの解説と、スピンのかけやすさや打球フィーリングについての記事を紹介しています。ガットについては小さな誤解で大きな損をすることがあるので正しい情報を収集してください。
Click!⇒ガット張りの硬さについて
ガット張りの硬さについてのアドバイスを集めたコーナー。ガット張りについては未開拓の荒野のような状態で、多くのプレイヤーがいまだに「推奨テンションの呪縛」にとらわれています。そのため「快適なプレー」という目的地にたどり着くためのルートを見つけるのは容易ではありません。正しい情報を得て迷路から抜け出してください。
Click!⇒ガットについてさらに詳しく!
ガットについてもっと詳しく知りたい方のための記事を集めたコーナーです。適切な硬さを見つけるための情報と不適切な張上の弊害等についての記事があります。「好きな打球感のセッティング」というワナにハマると戦力低下という迷路から抜け出せなくなります。
◆ガット張りを工夫しても「適切なガット張り」は見つからない
ガット張りについての関心が高い方には残念なことですが、でもこれは、まぎれも無い事実です。
その事実とは、「ガット張りだけでは適切なガット張りを見つけられない」ということで、ガット張りについてどんなに深掘りしても、それだけでは快適なセッティングを見つけることはできません。
なぜなら、ガットだけではボールを打つことができないからです。
ガットはフレームに張らないと使えませんが、そのフレームがプレイヤーに合っていないと、どんなにガット張りを工夫しても快適に打てる状態にはなりません。
ですから、快適に打てるセッティングを見つけるには、その前に「自分に合うラケット」を手に入れることが必要なのです。
でも、この話はもっと複雑で、ガットだけではボールを打てないのですが、同じ理由で、フレームだけでもボールは打てないので、自分に合うラケットを手に入れるには、適切なガット張りがされているラケットを試打することが必要なのです。
なぜなら、ガット張りが不適切なラケットをいくら試打しても良い状態にはならないので、時間のムダになってしまうからです。
テニスワンのラケットドックには適切なガット張りが施されているラケットが用意されているので、プレーが良くなるラケットが見つかります。Click!↓