合わないラケットは打点が狂う

ラケットが合わないと打点がおかしくなる

◆力を入れやすい打点は打ち負ける打点
「テニスのショットで【打球の重さ】と【打球感】は反比例する 」で書いたように、合わないラケットを使っているプレイヤーは、インパクトで強い手応えを感じるために力を入れて打ち始めます。

そうすると、初めは、強い打球衝撃に対する身体の反射で力が入るのですが、そのうちに力を入れやすい打点で打つことが習慣化します。

これは、力を入れて打つには、ボールの手応えが感じられる「力を入れやすい打点」が適しているからです。

ところが、その「力を入れやすい打点」はボールの重さが感じられるところであり、ボールから抵抗を受けるところなので、わざわざ「ボールに押される打点」を探して打つような状態になるわけです。

その結果、打ち負ける打点を自分から探して、そこで押されないように力を入れるという、とても変な状態に陥るわけです。

こうした、運動効率の悪い「物理的に矛盾した状態」をもたらすのが不適切なラケットの弊害なのです。

◆わずかに差し込まれる打点を選んで打つ
テニスワンでは、ラケットドックで10,000名以上のプレイヤーのスイングを見てきましたが、その中で、力を入れてボールを打っているプレイヤーはかなりの割合にのぼり、そういう場合、プレイヤー自身も「力を入れなければ強い打球は打てない」と思っているケースが多いのです。

そして、そういうケースのほとんどで、ラケット側のパワーが効率良く打球に伝わる最適なポイントから、ボール1〜2個遅れた打点で打つ姿が見られます。
それも、時々遅れるというのではなく、その状態が毎回正確に繰り返されるのです。

わずかに差し込まれる打点を正確に選んで打っているので、ボールの「出」が悪く、飛びに鋭さがない状態です。

「合わないラケット⇒手応えが強い⇒力を入れる⇒力が入る打点で打つことが習慣化⇒打球に勢いが無い」という仕組みで、合わないラケットはプレイヤーの戦力をダウンさせるわけです。

◆適切な打点とは
「合わないラケットでは打点が差し込まれる」と書きましたが、だからといって、「前で打つ」ことを推奨しているわけではありません。

世間では、「打点を前に!」とか「前で打て!」と指導されるケースが多いようですが、私どもは、これはやってはいけない取り組みの一つだと考えています。

なぜなら、常識的に考えれば当然のことですが、前だったらどこでも良いはずはないからです。

遅れたらダメなのはもちろんですが、だからといって、遅れなければどこでも良いわけではありません。

適切な打点は一か所だけなので、そこより前でも後ろでもダメなことに変わりはないわけです。

そして、適切な打点とは「プレイヤーの運動が打球に最も効率良く伝わるところ」です。

そういう「適切な打点」で打ったときには、打球感が軽くなります。
逆に言えば、「打球感が一番軽くなるところが最適な打点」ということです。
それより前でも後ろでも、打球へのパワーの伝わりが悪くなるのでボールの重さを感じます。

◆ラケットが合わないと打点もおかしくなる
でも、ここで問題なのは、使っているラケットがプレイヤーに合っていないと、適切な打点で打ってもそれなりの打球衝撃があるので、適切な打点を探しにくいのです。

その上、先述したように、「合わないラケット⇒手応えが強い⇒力を入れる⇒力が入る打点で打つことが習慣化」という仕組みで、わざわざ適切でない打点を探して打つようになるため、逆に、適切な状態から外れてしまう可能性が高いわけです。

自分に合うラケットで、インパクトポイントを高速で走り抜けるようなスイングを自分のものにしてください。

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