飛ばないラケットはアウトが多い?
飛ばないテニスラケットを使うと
アウトが増える!?
フェースが小さくてフレームの薄いラケットは、打球が飛びにくい傾向があります。
普通に打つと飛距離が短くなるわけです。
ですから、そうした飛ばないラケットでアウトが増えるというのは、変な話だと思われるかもしれません。
でも、こうした現象はごく一般的に見られることで、特殊なことではありません。
そういうことが起きてしまうのは、テニスプレイヤーに「フィードバック機能」が備わっているからです。
フィードバック機能
フィードバックとは、結果に問題がある場合に、さかのぼって途中行程が調整されることですが、テニスの場合も、ショットが連続するので、ショットの結果はすぐに次のショットに反映されます。
つまり、ネットしたら次はネットしないように動きが調整され、アウトが出たら、次はアウトしないように打ち方が変わるわけです。
ミスを防ごうとするのはプレイヤーの本能
そして、こうしたことはプレイヤーが特に意識をしなくても、自然に、無意識的に起きてしまいます。
「ネットせず、アウトもしないようにボールを打つ」というのは、テニスプレイヤーの本能とも言えますので、頭でいちいち考えなくても身体が勝手に反応してしまうのです。
その結果、飛ばないラケットを使って打球が短くなったりネットしたりすると、その次のショットでは、それが繰り返されないように打ち方が変わります。
そうした運動調整は意識的に行われることもあれば、無意識的に行われることもあります。
ということで、打球が短くなりやすい「飛ばないラケット」を使うと、プレイヤーは、いつも短くならないように打つようになります。つまり、飛ばそう飛ばそうという打ち方になってしまうのです。
飛ばそうとする動き
ボールを遠くに飛ばそうとする場合の変化には、大きく分けて三つあります。
1.力を入れて打とうとする
これは、打つときに入れる力を強くするというものです。スイングパワーを上げて打球が短くならないようにするわけです。その結果、打つときの身体の動きに力みが出てきます。
2.回転量を減らす
二つめは、打球の回転量を減らすというものです。打球に順回転をかけると球足が短くなってしまうので、回転量を減らして球足を伸ばそうとするわけです。
3.打球軌道を上げる
三つめは、打球の軌道を上げるというものです。ものを遠くに飛ばす際には、水平軌道ではすぐに落下してしまうので、高めに打ち出して飛距離を伸ばすことが必要です。
アウトの確率が上がる
こうした変化によって打球が短くなるのは防げるようになるのですが、同時に、アウトする確率が増えることにもなります。
アウトが出たときに、身体に力んだ感じが残っていたり(1.のケース)、棒玉のような回転量の少ない打球であったり(2.のケース)、ネットを1m以上の高さで越えていったり(3.のケース)していれば、それはラケットの飛びが不足しているときの症状だと考えたほうが良いでしょう。
つまり、アウトが出たのはプレイヤーがアウトするように打ってしまったためであり、ラケットが飛びすぎてアウトしたわけではないということです。
試合の大事なポイントで自分の打球がアウトしたりすると、ラケットが飛びすぎだと考えてしまうことがあるのですが、それで、もっと飛ばないようなラケットに替えてしてしまうと、アウトが減らないばかりか逆に増えることになります。
プレイヤーのパワーが足りないからアウトする
このように、アウトが出るのはラケットのパワーが足りない場合が多いのですが、それは同時に、プレイヤーのスイングパワーが足りないということでもあります。
飛ばないラケットでも、プレイヤー側に充分なスイングパワーが有れば問題ないわけで、それがないから棒玉のようなすっぽ抜けが出るわけです。
だからといって、パワーを絞り出そうとして力んで振れば、バランスが崩れるだけで、かえってミスが増えます。ですから、力まずに打球を押さえ込めるだけの基本的なパワーが必要なのです。
ジュニアプレイヤーの方が、ちょっと背伸びして憧れのプロ選手のラケットを選んだりすることがありますが、プレイヤーのパワーに比べてラケットの飛びが足りない場合は、力んでアウトというケースが多くなります。
アウトが出たときにしっかり打ったという感じが残っている場合は、ラケットが飛ばないからアウトしたと判断してください。
ラケットのパワーがありすぎでアウトが出るのは、プレイヤーが油断したときがほとんどで、しっかり打ったときではないのです。同じアウトでも原因が違うわけです。