硬いガット張りから生まれる誤解

ガットが硬いと
「強い手応え=強いショット」
だと誤解する

強い手応え=強いショット!?

ポリエステル系ストリングは、ナイロン系ストリングやナチュラルガットより伸縮性が低いため、ボールが飛ばずにインパクトの手応えも大きいのですが、プレイヤーはその衝撃に負けないように打とうとして力を入れる傾向があります。

逆に言えば、力を入れて打っても飛びすぎないので、スイングを調節せずに打つことができるため、ハードヒッターを自称するプレイヤーに好まれます。

ナイロン系ストリングでも、季節にかかわらず面圧60以上と、硬めに張っている方についても同じことが言えます。

そして、そうしたハードなセッティングでインパクトの手応えが大きいラケットを使っていると、その衝撃感に慣れて、さらに、そういう手応えを求めて打つようになる傾向があります。
強い手応えがあると強い打球を打っているという気がするので、「強い手応え=良いショット」というイメージに陥りがちになるのです。

何かもの足りない

ラケットドックに参加いただく方々の中にも、そうした傾向のプレイヤーが男女を問わずかなりの割合で見受けられます。
そういう方々のベストフィットラケットについての印象は共通していて、「何かもの足りない、打った気がしない」というものです。
ベストフィットとして選ばれるラケットは、ほとんどのケースで打球の勢いがそれまでより良くなるのですが、それにもかかわらず、プレイヤー自身の感覚としては「何かもの足りない」という感想になるのです。

衝撃の大きさ=伝達ロス

この、「強い手応え=強いショット」というイメージが大きな落とし穴なのです。
もこのブログでも何度か書いていますが、手応えや打ち応えを求めていくと、スイングのエネルギーがボールに伝わる際の伝達ロスが大きくなるのです。

「スイングパワー」=「インパクトの衝撃」+「打球のエネルギー」
⇒「スイングパワー」-「インパクトの衝撃」=「打球のエネルギー」という図式を頭に浮かべていただくと分かりやすいかもしれません。

スイングの力がボールに効率良く伝わらなかった時の、出戻りのエネルギーがインパクトの衝撃の大きさになる
とお考えいただくいても良いでしょう。
衝撃が大きくなればなるほど、スイングパワーがそれに食われてしまうため、打球の勢いが無くなるのです。

芯を外して打つ

「芯を食う」というのは、タイミングという時間的なポイントと、スイートスポットや打点という空間的なポイントが、ボールに力を伝達するのに一番適したところでピッタリ一致するということです。
伝達効率が良くなればなるほど手応えが小さくなり、打球スピードが増します。

強い手応えを求めるということは、その逆で、芯を食わないように打つことなのです。
打ち応えを求めると、知らないうちに時間的にも空間的にも「芯」を外して打つようになりやすいのです。
その結果、伝達効率の悪い打ち方になって、ハードアクションなのにイージーボールという悪循環に陥るわけです。

手応えがないと不安になる

インパクトの手応えが小さいと、力が上手く伝わっていないのではないかと不安に思ってしまう方が結構多いのです。
プレー中はとても忙しいので、自分の打球の状態を客観的に観察できる人はあまり多くは居ません。
そのため、せっかく伸びのある良いボールが打てているのに、それはダメな状態だと勘違いして、手応えを感じる打ち方に戻してしまうわけです。

迎え打つ感覚ではヘッドが走らない

また、打ち応えを求めていくと「振る」というより「打つ」感覚になってしまいます。
衝撃が強いとプレイヤーの意識はどうしてもそこに向くようになるため、ボールインパクトに意識が集中して「ショット=インパクト」というとらえ方をするようになり、「インパクトポイントを通過して振り抜く」というイメージを持ちにくいのです。
その結果、ボールとの押し合いのようになってヘッドスピードが出ません。

打球軌道を強引に抑え込むような回転をボールに与えるためには、「ラケットヘッドがボールを追い越すくらいのイメージで振り抜く」ことが必要なのですが、「打つ」感覚ではヘッドが走らずに、ボールと衝突して押し返すような状態になるため、抑えの効かない棒玉でのアウトが出やすくなります。
こうした状態を私どもの言い方では「プッシュアウト」と呼んでいます。

ポリエステル系ストリングを使ったり、ナイロンでも極端に硬い張り上がりにしていると
こうしたプッシュアウトが増えるため、それを防ぐために、さらにハードなセッティングを求めてしまうということもあります。

ハードなセッティングでは解決しない

これまでのフィッティングの経験から、ネットとアウトを繰り返して深さが安定しないのはラケットのせいだと考えられますが、そうではなく、安定的にアウトするのはラケットのせいではなく、基本的にプレイヤーのせいです。

そこにはいろいろな原因が考えられますが、「プレイヤーが強い打球感を求めている」ということが、その一因になっているケースが少なくありません。
アウトが多発する状況をラケットで解決しようとしてハードなセッティングにしていっても、状況の改善は見込めないばかりか、悪化する可能性が高いでしょう。

強く当てるのではなく速く振り抜くというイメージ

ストロークでもサーブでもスマッシュでも、強い打球は強い打球感からは生まれません。
強い打球を自分のものにするためには、強く当てるというイメージを捨てて、速く振り抜くというイメージを持つことが必要です。
スイングの途中にインパクトがあったなという感じで、その手応えが気にならないくらい衝撃感が軽いほうが良いのです。
速く振り抜くことでボールを抑え込む感覚が身に付けば、より積極的に振っていくようになります。

伝達効率の向上

ストロークやサーブの練習の際に「伝達効率の向上」というテーマを持っていただければと思います。
スイングの力がインパクトの衝撃で逃げずに100%ボールに伝われば、力まずに強い打球が打てます。
少ない力で強い打球を生み出すことをイメージして練習することで運動効率は良くなり、「イージーアクションでハードボール」が可能になります。

壁打ちなどのように、短時間で繰り返しが可能な状態のほうが、1打1打の伝達効率の違いをチェックしやすいかもしれません。
手応えの大きさとボールが壁に当たる音を比べて、できるだけ小さな手応えで大きな音のする打ち方、タイミングとポイントを探すわけです。

テニスは長時間打ち続けるスポーツなので、体力の浪費は極力避けたいわけですが、「伝達効率の向上」こそが打球の威力を増し、かつ、体力の消耗を防ぐ最善の方法なのです。

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ガット張りの理想は「打球感を無くすこと」です。「打球衝撃が最小限になるセッティング」が実現すれば、インパクトでヘッドが走る状態になって「伸びて沈む打球」が手に入ります。ガット張りは戦力を左右する大切な要素であり、打球の伸びが勝敗に直結します…

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知らないと損
ガットについての情報

ガット張りについての40件以上の記事が以下の4つのジャンルに分類されています。

Click!⇒ガット張りで損をする
実際にボールを打つのはガットで、フレームはガットのアクションを受け取るだけの存在なので、ラケットのパフォーマンスの主役はガットです。なので、ガット張りを軽視すると、気づかないうちにプレー上で損をすることになります。このコーナーでは、そうした不利益の具体例を紹介しています。

Click!⇒ガットの種類の選び方
テニスガットについての記事を集めたコーナーです。ガットの基本知識や素材や太さの選び方などの解説と、スピンのかけやすさや打球フィーリングについての記事を紹介しています。ガットについては小さな誤解で大きな損をすることがあるので正しい情報を収集してください。

Click!⇒ガット張りの硬さについて
ガット張りの硬さについてのアドバイスを集めたコーナー。ガット張りについては未開拓の荒野のような状態で、多くのプレイヤーがいまだに「推奨テンションの呪縛」にとらわれています。そのため「快適なプレー」という目的地にたどり着くためのルートを見つけるのは容易ではありません。正しい情報を得て迷路から抜け出してください。

Click!⇒ガットについてさらに詳しく!
ガットについてもっと詳しく知りたい方のための記事を集めたコーナーです。適切な硬さを見つけるための情報と不適切な張上の弊害等についての記事があります。「好きな打球感のセッティング」というワナにハマると戦力低下という迷路から抜け出せなくなります。

◆ガット張りを工夫しても「適切なガット張り」は見つからない
ガット張りについての関心が高い方には残念なことですが、でもこれは、まぎれも無い事実です。
その事実とは、「ガット張りだけでは適切なガット張りを見つけられない」ということで、ガット張りについてどんなに深掘りしても、それだけでは快適なセッティングを見つけることはできません。
なぜなら、ガットだけではボールを打つことができないからです。
ガットはフレームに張らないと使えませんが、そのフレームがプレイヤーに合っていないと、どんなにガット張りを工夫しても快適に打てる状態にはなりません。
ですから、快適に打てるセッティングを見つけるには、その前に「自分に合うラケット」を手に入れることが必要なのです。
でも、この話はもっと複雑で、ガットだけではボールを打てないのですが、同じ理由で、フレームだけでもボールは打てないので、自分に合うラケットを手に入れるには、適切なガット張りがされているラケットを試打することが必要なのです。
なぜなら、ガット張りが不適切なラケットをいくら試打しても良い状態にはならないので、時間のムダになってしまうからです。
テニスワンのラケットドックには適切なガット張りが施されているラケットが用意されているので、プレーが良くなるラケットが見つかります。Click!↓

GUT LIVEなんて必要ない![広告]
ガットの動きが悪いせいで起こるネットやアウトを、全部自分のせいだと思いたい人には、GUT LIVEは必要ありません。
◇ボールが面からこぼれてネット
ガットが動かないと「食い付き感」が生まれないので、インパクトでボールをつかまえられずにポロッとこぼれてネットすることが多くなります。そう、あの惜しいネットは食いつかないガットのせいで、自分のせいではなかったかもしれないのです。
◇スピンで押さえ込めずに浮いてアウト
さらに、インパクトで動いたガットが戻るときに順回転がかかるので、ガットが戻らないと回転が安定せずスッポ抜けのアウトが出やすくなります。逆に、確実に回転がかかればショートクロスやスピンロブなどが打ちやすくなります。
◇打球の深さがバラバラ
ガットの動きが安定せずに、ボールインパクトで動いたり動かなかったり、戻ったり戻らなかったりすれば、フェースから打ち出される打球の角度が毎回変わるので、その影響で打ショットの深さが不安定になります。

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