打点の高さとスイング軌道の変化
テニスのストローク
打点の高さに応じたスイング軌道の変化
テニスは、飛んで来るボールを打ち返すスポーツなので、打つ前のボールの高さは毎回変わります。
なので、それに合わせてスイングの高さを変えないと空振りしてしまいますが、それだけではなく、打点の高さが変わるとスイング軌道のカーブも変わります。
テニスプレイヤーは、飛んで来るボールの高さに応じて毎回違うカーブでラケットを振っているわけです。
人の腕の長さは、縮めることはできても元の長さより伸ばすことはできないので、ラケットを振るときには、腕が付いている肩を中心にした回転軌道がラケットスイングのベースになリます。
ですから、打点の高さに合わせて自然に振ると、腕が肩に接続しているという身体の構造上、スイングの曲線は以下のような状態になるのが普通です。
●低い打点で打つ場合
腰の位置より低い打点で打つ場合は、肩を中心にしたナナメ下向きの円運動になるので、自然に振れば、ラケットヘッドは肩の高さから膝の高さへと一旦下がり、次に再び肩の高さまで上がります。
つまり、「上から下へ⇒下から上へ」と移動するわけです。
そして、上から下がってきたラケットは肩の真横で一番低くなりますが、通常の打点では、そこより先のラケットが上がっていくところでボールとぶつかリます。
そのため、低い打点で打つ場合は、特別な努力をしなくても、打球に順回転をかけやすい下から上へのスイングになるわけです。
●腰から上の高さで打つ場合はスイングが水平になりやすい
ところが、上記の図のように打点の高さが肩の位置に近くなると、自然に振ればスイング軌道は水平に近い状態になるので、ラケットヘッドが上下に動く幅は小さくなります。「横振り」のような状態です。
●高い打点では上から下へのスイングになるのが自然
それに対して、肩より高い打点で打つ場合は、身体の構造上、その高い打点からさらに上方向に振り抜くのは難しいので、「下から上へ⇒上から下へ」というスイング軌道になり、最後は下方向に振り下ろすような形になるのが自然です。
●打点の高さに適した「スイング軌道」と「球筋」はリンクしている
このように、打点の高さに応じてスイングの軌道も変わるのですが、これについては、「それぞれの状況に適した球筋」ともリンクしています。
すなわち、低い打点から打ち出す場合、ネットの高さを安全に越えて相手コートのベースライン内側に着地させるには、打球に順回転をかけたほうがアウトやネットのリスクが減るのですが、身体の構造上も、低い打点で打つときは、自然に振れば順回転をかけるスイングになりやすいわけです。
それに対して、ネットの高さより高い打点から打つ場合は、直線的に打ってもコートに入りやすいので、順回転をかけて打球軌道を下に曲げる必要性が減るのですが、身体の構造上も、高い打点は順回転をかけにくく、フラットに打ったほうが楽です。
このように、打点の高さによって必要とされる球筋と、打点の高さに適した打ち方とはうまくリンクしているのですが、そこにプレイヤーが「固定的なスイングイメージ」を持ち込んでしまうと、おかしなことになります。
●「固定的なスイングイメージ」を持つと「適切なスイング軌道の変化」が起きにくくなる
「固定的なスイングイメージ」とは、「プレイヤー自身の努力目標」と言い換えても良いと思いますが、その代表的なものは、「下から上に振り抜く」や「テイクバックでラケットヘッドを下げる」などです。
●下から上に振り抜く
「下から上に振り抜いてスピンをかけるのが正しいスイングだ」と思い込んでいる人は、高い打点でも同じようにそれをやろうとするのですが、そうすると身体がグラつく原因になります。
具体的には、右利きのフォアハンドの場合は、高い打点で順回転をかけようとすると、そこからさらに上方向に振り抜くのは困難なので、無理にやろうとすると体の軸が左側に倒れやすくなり、打つたびにフラつくことになります。
そして、バランスを崩すこと以上に損なのは、高い打点から直線的なスピードボールを打ち込める状況なのに、わざわざスピンのかかった遅いボールを打つことで、相手に時間的な余裕をプレゼントすることです。
●テイクバックでラケットヘッドを下げる
テイクバックでラケットヘッドを下げようとする取り組みについても、スイング軌道の図を見ていただくと、あまり有効ではないことがわかるでしょう。
最初の図でわかるように、低い打点に向けて自然に振れば、わざわざテイクバックでヘッドを下げなくても、インパクト時は下から上へのスイングになリます。
人の身体の構造上、低い位置で水平にラケットを振るのは無理があるので、下から上に振ろうとしなくても自然にそうなってしまうわけです。
そして、ラケットヘッドを下にセットした状態から振り始めるより、ジェットコースターのように、上から下に下がってくるスピードを利用して振り上げたほうが、ムダな力を使わずにヘッドスピードが上がります。
さらに、高い打点で打つときにラケットヘッドを下げるのは、わざわざインパクトの位置から遠いところにラケットを持って行くことになるので、ムダの多いスイングになります。
このように、固定的、定番的なスイングイメージを持ってしまうと、打点の高さに合わせた適切なスイング軌道の変化が起きにくくなり、窮屈なスイングになりやすいわけです。
特に、高い打点からスピード重視の攻撃的なショットを打ち込むのが難しくなるでしょう。
「打点の高さに応じたスイング軌道の変化」は、「自然に振れば、誰でも普通はそうなってしまう」という動きなので、特別な努力は必要ありません。
それなのに、「下から上に」などと意識的に振ろうとすることで自然なスイング変化が消えてしまい、硬直的でギクシャクしたスイングになっているケースは少なくないようです。
テニスは、打つ前のボールの状態に合わせて臨機応変にスイングを変えなければならないスポーツなので、固定的なスイングイメージを持つのは避けたほうが賢明です。
以下はこの記事グループの構成です。
テニスラケットの良し悪しは自分ではわからない
テニスのショットは「無意識的な反射運動」!?
1.打点の高さに応じたスイング軌道の変化
2.ボールのスピードに対応するためのスイング調節
3.ボールの移動方向に合わせたスイング調整
4.飛んで来るボールの回転に合わせたスイング調節
「テニスプレイヤーがコート上で無意識的にやっていること」
「上達への近道」—その1.自分の打ち方は自分の自由にはならない
「上達への近道」—その2.ミスを減らすために必要なこと
「上達への近道」—その3.打ち方を直すには
テニスでは上達を自覚できない
テニスラケットが合っているかどうかは自分ではわからない—まとめ
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それは下手になるための練習かもしれない/全14件
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