ラケットの特性を変える意外な方法
テニスラケットのパフォーマンスを
変える意外な方法
テニスラケットの打球フィーリングやパフォーマンスを変えるにはいろいろな方法があり、その効果や影響について書かせていただきます。
その1—ストリングセッティング
ストリング・セッティングを変えるというのは、ラケットの打球感やパフォーマンスを変えようとする際には、誰もが最初に考えることだと思います。
ストリングの種類や硬さを変えることでラケットのパフォーマンスは大きく変わるため、これは当然の取り組みです。
ストリング・セッティングは、何を=「ストリングの種類」と、どれくらいの硬さで=「張り上げの硬さ」という二つの要素で構成されています。
ラケットのパフォーマンスに何らかの不満を感じた場合、最初にやるべきことは「張り上げの硬さを変える」ことです。
季節変動による気温の変化や、試合のコートサーフェスの違いなどに対応するために、張り上げの硬さを変えると打ちやすさが大きく変わります。
暑いときは硬めにして、寒いときは柔らかめにするというのが基本です。
次に、張り上げの硬さを変えてもしっくり来ない場合には、ストリングの種類を変えることになります。
ストリングの種類を変えようとする際には、普通、打球フィーリングの好みを基準にして選ぶことが多いのですが、できれば、これは避けたほうが賢明です。
なぜなら、好みの打球フィーリングに仕上がった時に、打球の勢いが前より落ちているということが、よくあるからです。
では何を基準に選べば良いかということですが、それは「相手の反応」です。
相手が打ち返しにくいと感じる打球が出ていれば、そのストリング・セッティングがグッドということです。
こちらがあまりしっかり打っていないときでも、相手が変な返球ミスをするような状態が良い状態のなのです。
さらに言えるのは、張り上げの硬さの変更も含めて、ベストなストリング・セッティングを手に入れるためには「比較」が必要です。
同じモデルで同じスイングウェイトのラケットを、2本以上用意して打ち比べないと、戦力アップにつながるストリング・セッティングは見つけにくいでしょう。
1本のラケットを張り替えて、以前に打ったときのフィーリングを思い出しても、きちんとした比較にはならないからです。
そして、2本のラケットを打ち比べたときにも、一番優先すべきなのは相手プレイヤーの感想です。
自分の好みを優先しても戦力アップにはつながりません。
その2—スイングウェイトの調整
次に、もう少しラケットについて知識がある方は、スイングウェイトを調整することで、ラケットのパフォーマンスを変えようとします。
コートサーフェスが速い時や対戦相手が強打中心の場合などは、スイングウェイトを重くすることで、インパクト時の面の安定性が増して、打球衝撃が弱まります。
こうした調整は上級者編といえますが、スイングウェイトの数値をチェックせずに、むやみに多量の鉛テープを付けたりすると、別の気が付かないところでプレーに悪影響を及ぼすことがあるので、ご注意ください。
現状のスイングウェイトの数値を知った上で、5~10ポイントくらいのアップにとどめたほうが良いでしょう。
(5gではありません。5g付けると十数ポイントアップしてしまいます。付加する際の重量は、トータルで1~2gを限度と考えていただいたほうが、変な状態に陥るのを防げるでしょう。)
ラケットの調整前のスイングウェイトが適正数値範囲に入っている場合は、重くし過ぎるのは避けるべきで、5ポイント程度アップするだけで、プレー上の違いが感じられるはずです。
5ポイント程度のスイングウェイト調整を行う場合は、キモニーの鉛テープで幅の細いタイプ(スリムタイプ)が一番適していると思います。(H型のタイプは1個が3g有りますので、スイングウェイト調整に使うには重すぎます。)
このスリムタイプを、2cmくらいの長さに4枚切って、フェース裏表の10時2時の位置に貼るだけでも、かなりの違いが生まれるはずです。
これより貼る位置が下では、スイングウェイトの数値があまり効果的に上がりません。
逆に、フェースのトップ部分に集中的に貼るのも避けて下さい。
気をつけなければいけないのは、スイングウェイトを増やして良い感じで打てるようになったときに、「もっと増やせばもっと良くなるのでは」と考えることで、何事も、過ぎればマイナスが発生します。
その3—グリップ材の変更
ラケットのパフォーマンスを変える調整方法として、意外に知られていないのがグリップを替えることです。
グリップの素材を変えることでインパクトの手応えを変えることができます。
基本的には、柔らかい素材にすれば打球感がソフトになり、悪く言えば鈍くなります。
逆に、皮などの硬い素材にすれば打感がシャープになり、悪く言えば衝撃感が強くなります。
打球衝撃はできるだけ吸収したほうが身体に良いとお考えの方が多いのですが、クッション性を上げて柔らかくすればするほど、インパクトが分かりにくくなるため、ショットのキレが失われるという傾向も見られます。
また、多少のオフセンターヒットも感じ取りにくくなるため、それでもOKという状態になりやすく、正確でクリアなインパクトを得にくくなる可能性もあります。
グリップテープは必要?
大多数のプレイヤーは、新品のラケットに巻かれているクッショングリップの上に、グリップテープを巻いて使っているのではないでしょうか。
テニス界の常識となっているこのやり方に、一度疑問を持ってみても良いかもしれません。
まず、グリップテープを巻く必要があるかどうかです。
昔々、グリップテープが使われ出した頃のグリップ材は天然皮革が中心で、クッション性が低く、特に、使い込んだものはかなりゴツゴツした感じでした。
同時に、使用によって表面がツルツルになり、滑りやすくなることもありました。
さらに、クッショングリップの出始めの頃もクッション性はあまり良くありませんでした。
そうしたことから、ゴツゴツした手応えを改善するためにグリップテープの使用が一般化してきたのですが、現在、ラケットに巻かれているクッショングリップは改良が進んで、高いクッション性を発揮するものが多くなり、表面加工も工夫されています。
そのため、グリップテープで手応えを柔らかくする必要が無くなっていると言えるでしょう。
滑りやすさという面でも同じことが言えます。
TENNIS-ONEでもグリップテープを売っていますので、買っていただくことは嬉しいのですが、「テニスラケットにはグリップテープを巻いて使うものだ」という固定観念だけで使い続けている場合は、巻かないほうが良い場合もあるとお考えください。
グリップテープの影響
グリップテープを巻くことの影響には以下のようなものがあります。
◇1サイズ太くなる
グリップテープを巻くことで、おおよそですが1は2に、2は3になります。
適正なサイズを選んでからグリップテープを巻くと、当然のことながら太すぎるわけです。
※大昔の話で恐縮ですが、グリップサイズは3、4、5という展開でした。
女性は3、男性は4か5ということです。
現在はほとんどのラケットが1、2、3で、4というサイズはわずかモデルに限定されています。
昔に比べればずいぶん細いグリップを使うようになったわけで、それにはいろいろな原因が考えられますが、グリップテープの使用も、その一つであることは間違いないでしょう。
◇グリップが丸くなる
グリップの形状は八角形ですが、八角形をしているのはグリップの心材だけで、その上に巻かれるものは角には関係ありませんので、巻けば巻く程、八角形の形状が失われ丸に近付きます。
クッショングリップの上にグリップテープを巻くと、グリップの角が丸くなります。
グリップテープを2枚巻いたり、スポンジの入った凸凹タイプを巻いたりするとさらに丸くなります。
そして、グリップの角が取れて丸くなると面の向きが分かりにくくなります。
フェースが向いている方向が手で感じ取りにくくなるわけです。
◇過剰なクッション性
グリップテープが巻かれることで、手とラケットフレームとの間のクッション層が1枚増えることになり、その分、インパクトの感触が分かりにくくなります。
手とラケットの間のクッション層が厚くなりすぎると、ラケット操作にタイムラグが生じることがあります。
ランニングシューズなどの場合でも、クッション性があまり高いと、着地の衝撃を逃がしてくれるかわりに、蹴りの力も同じように逃げてしまうため、パワーロスにつながります。
ラケットのグリップでも同じようなことが起きるのです。
また、インパクトの手応えがフワフワしすぎると、体の適切な反応が引き出されなくなる傾向があり、プレイヤーのパワーがボールに伝わりにくくなるという現象が生まれます。
スポンジの入ったデコボコタイプのグリップテープをご使用の方も少なくないのですが、グリップの感触があまりフワフワしていると、微妙なラケット操作が難しくなります。
インパクトのほんのわずかな一瞬でボールに効率良くパワーを伝え切るためには、グリップのクッション性を適度な状態にコントロールすることも大事な要素なのです。
使い古されてボロボロになったグリップテープのままでは、インパクトの質が低下して打球の勢いが失われる可能性があります。
変なところで損をしないためにも、グリップについて一度見直してみて下さい。
その4—振動止めの使用
ストリング面に振動止めを付けるかどうかも、打球感に影響します。
振動止めを付けることで、インパクト後のストリング面の振動が速く収まるため、打球音が「コーン」から「コン」に変わり、打球感がマイルドに感じられるのですが、同時に、インパクトの感覚が少しぼやける傾向があります。
その影響として、インパクトポイントがフェースの中心からストリング3本分くらい横にずれたときには、インパクトのスッキリ感が失われて少し濁った感じになるのですが、振動止めを付けていると、そうした違いを感じ取りにくくなるため、不正確なインパクトを許容してしまうという悪影響もあるようです。
グリップテープや振動止めを使って打球感をマイルドに仕上げることで、インパクトの感覚があいまいになってしまい、キレの良いショットが生まれにくくなるというデメリットも考えられるので、思わぬところで損をしないように注意が必要です。