ラケットの飛びをSPECで見分ける
テニスラケットのパワーを
スペックの数値で見分ける方法
テニスラケットはとても分かりにくい商品なので、どうやって選べば良いのかと悩んでいる方も少なくないと思われます。そこで、そういう方のお役に少しでも立てればと考えて、書かせていただきました。
フェースの広さとフレームの厚み
テニスラケットのカタログには、モデルごとの性格の違いを説明するため、10項目前後の製品スペックが記載されています。さらに、現在ではほとんどのラケットについて、フレーム自体のどこかにスペックの数値が直接記載されています。
そうしたスペック項目の中で、ラケットのパワー(=ボールの飛び)に直接影響するのは、「フェースの広さ」と「フレームの厚み」です。
フェースの広さ
フェースの広さの数値単位は、これまでの習慣から「平方インチ」が使われており、現在市販されているラケットのフェースサイズの数値範囲は、およそ85~120平方インチです。
(この他では、ラケットの長さについても、数値の単位には「インチ」が使われており、それに対して、バランスポイントの表記は「センチ」や「ミリ」が使われていたりと、長さの単位で「インチ」と「センチ」が混在している状態で、ちょっと複雑です。)
フレームの厚み
フレーム厚の単位については通常「ミリメートル」が使われており、現在市場に出ているラケットのフレーム厚の数値範囲は17~30mm程度です。
フェースの広さやフレームの厚み等、テニスラケットの外形の形状が統一的なものでなく、これだけの違いがあるということは、使う側が自分に合わせていろいろ選べる状態になっているということです。
ただ、いろいろ選べるということは、スペックの数値の意味やプレー上の影響を正しく理解していないと、選び間違える可能性もあるわけです。
そこで、そうした数値の見方について簡単に説明したいと思います。
数値が大きいほど飛びやすい
ラケットのパワー(=ボールの飛び)に直接影響する「フェースの広さ」と「フレームの厚み」ですが、二つの項目は共に「数値が大きいほどボールが飛びやすい」と覚えておいてください。
つまり、フェースサイズは大きければ大きいほどボールが飛んで、フレームの厚みについても、厚ければ厚いほどボールが飛びやすいということです。
もちろん、ラケットのパワーを左右する要素はこれだけではありませんので、「フェースの広さ」と「フレームの厚み」という二つの数値だけでボールの飛びが決まるわけではありませんが、カタログを見てラケットの性能を比べる際に、だいたいの目安にはなるでしょう。
「飛ばない×2」か「良く飛ぶ×2」の組み合わせが多い
この二つの数値の具体的な組み合わせは各モデルごとにいろいろなのですが、基本的な傾向として、小さいフェースサイズには薄目のフレーム厚、大きいフェースサイズには厚めのフレーム厚という組み合わせが多くなっています。
それに対して、小さいフェースサイズに厚いフレーム厚や、大きいフェースサイズに薄目のフレーム厚という組み合わせは比較的少ないと言えます。
つまり、小さいフェースサイズ(=飛ばない)には薄目のフレーム厚(=飛ばない)という、「飛ばない×2」の組み合わせになっていることが多く、大きいフェースサイズ(=良く飛ぶ)には厚めのフレーム厚(=良く飛ぶ)という「良く飛ぶ×2」の組み合わせが多いわけです。
100平方インチで24mmが中間的
フェースサイズの数値範囲はおよそ85~120平方インチで、フレーム厚の数値範囲は17~30mm程度と書きましたが、この二つの数値範囲の中間値は102.5平方インチの23.5mmということになります。
ですから、100平方インチで24mmというフレーム厚のラケットが、現在市販されているラケットのパワーとしては、ちょうど中間的な位置付けと判断して良いでしょう。
100平方インチ前後のモデルが多数派
実際に、現在のラケット市場ではフェースサイズが100平方インチ前後のモデルが多数派を占めており、そのため、そのグループのフレーム厚のバリエーションは20~26mmと幅広くなっています。
フェースサイズが同じ100平方インチのモデルの中から選ぶ際は、フレーム厚の数値が大きいほうがボールが飛びやすいと単純に判断しやすいわけですが、それに比べて、95平方インチで22mm厚のモデルと100平方インチで20mm厚のモデルでは、飛びの比較判断がちょっと難しくなるわけです。
長期的に見て小さくなる傾向
過去には110平方インチ程度の「オーバーサイズ」と呼ばれたフェースサイズが全盛の時期もありましたが、ラケットに使われる素材の進化などによってフレームの剛性がアップした影響で、大きなフェースサイズが減って一時より小型化しています。
同じ理由で、フレーム厚についても減少傾向が見られるため、フェースサイズとフレーム厚の数値の平均値は、長期的に見て小さくなる傾向が見られます。
ブランドよりスペックで選んだほうが選択肢が広い
どのラケットメーカーも、自社ブランドで全てのテニスプレイヤーのニーズをとらえようと考えるため、フェースが小さくて薄い「飛ばないラケット」から、フェースが大きくて厚い「良く飛ぶラケット」まで、全てをトータルでラインナップする傾向があります。
そのため、たくさんのモデルがラインナップされるのですが、その中で、ある程度スペック数値を絞り込んで探そうとすると、そのブランドの中では対象となるモデルが少ししかないという状況が生まれます。
ラケットを選ぶ際には、最初に好きなブランドを選んで、そのブランドのラインナップの中でどれにしようかと考える方が多いと思われますが、一つのブランドの中では、パワーレベルの近いモデルの数はそれほど多くないわけです。
ですから、同じブランドの中でどれにしようかと考えるより、複数のブランドから同じくらいの外形スペック値のモデルをピックアップして比べたほうが、選択肢が拡がるでしょう。
スペックで読み解くラケットの性格
メーカーのカタログを見る際に、以上のようなことを頭に置いて、「フェースの広さ」と「フレームの厚み」に注目してそれぞれのモデルを比較してみると、各モデルの性格が、これまでより少し分かりやすく感じられるかも知れません。