ラケットは料理で言えば調味料!?
テニスラケットの役割は
料理で言えば調味料!?
テニスラケット選びに悩んでんでいる方は少なくないようです。
でも、判断を難しくしている原因は、ラケットに対する「過剰な期待感」にあるのかもしれません。
ラケットに期待する気持ちを少し後退させて、ラケットについての見方をちょっと変えてみては、というのが今回の提案です。
そのテーマは、
「テニスラケットには良いショットを打つ機能はない」
—–プレイヤーという素材の持っている味を、上手く引き出せるかどうかがキーポイントというものです。
プレイヤーとラケットの関係は、料理で言えば素材と調味料の関係と同じだと思います。
プレイヤーが「料理される素材」で、ラケットが「調味料」です。
良いショットを打つのはラケットではなくプレイヤー
多くのプレイヤーは、スピンのかけやすいラケット、打球の威力が増すラケット、ボレーしやすいラケット、コントロールしやすいラケット等々、良いショットが打てるラケットを探そうとする傾向があるですが、実際に良いショットを打つのはラケットではなくプレイヤーだという最も基本的なことが忘れられているように見えることが少なくありません。
調理料が美味しいわけではない
料理の場合、味付けがうまくいくと美味しい仕上がりになりますが、その時に美味しくなったのは素材であって調味料ではありません。
ステーキの場合は、塩コショウで美味しくなるのは素材の肉であって、塩コショウが美味しいのではないわけです。
当たり前のことですが、塩や醤油のような調味料は、素材を美味しくする機能がありますが、それ自体が美味しいわけではありません。
ラケットが良いショットを打つわけではない
テニスの場合、プレーをするのはプレイヤーであってラケットではありません。
料理の場合、主役は素材であって調味料は脇役でしかないのですが、それと同じように、テニスでも主役はプレイヤーであって、ラケットは脇役でしかないのです。
ですから、プレイヤーの良い動きを引き出すラケットというのはあるのですが、良いショットを打つ機能を持ったラケットというものはないのです。
素材が美味しくなったり不味くなったりする
でも、主役とピッタリ息の合った脇役が居ないと主役が生きないのと同じように、合うラケットでないとプレイヤーのパフォーマンスが下がります。
プレイヤーの良さを引き出す名脇役としてのラケットと、プレイヤーの良さを封じ込めてしまう共演者としてのラケットがあるのです。
ラケットの性能はショットの結果に影響し、ショットの結果はプレイヤーの動きに影響します。
「ラケットの性能⇒ショットの結果、ショットの結果⇒プレイヤーの動き」という関係です。
テニスプレイヤーは基本的に、「相手コートに入るようにボールを打つ」という本能を持っているため、ミスが繰り返されないように、プレイヤーの動きは常に自動修正されます。
そうした仕組みで、ラケットの性能によってプレイヤーの動きが変わるのですが、その変化には良い変化と悪い変化があるわけです。
調味料の選択によって、素材が美味しくなったり不味くなったりするのと同じで、素材の持ち味が最大限に生かされる場合と、持ち味が死んでしまう場合があるのです。
万能はない
どんな素材でも美味しく仕上がる「万能の調味料」は存在しないのと同じように、どんなプレイヤーでも、プレーがうまくいくようになる絶対的に良いラケットというものは存在しません。
素材の味を上手く引き出す調味料が素材毎に異なるのと同じように、プレイヤーから良い動きを引き出すラケットはプレイヤー毎に異なるのです。
マヨネーズをかければ何でも美味しくなる—–ということはないのです。
美味しい調味料はない
「何か良いラケットはないか」と探し回るのは、自分という素材のことを忘れて、美味しい調味料を探すのと同じです。
大切なのは、調味料に過大な期待を持つことではなく、自分という素材に合った調味料を探し出すことです。
調味料に詳しくても美味しい料理は作れない
また、美味しい料理を作るのに必要なのは、調味料の材料や製法についての知識ではありません。
調味料についてよく知っていても美味しい料理が作れるわけではなく、大切なのは、調味料が素材の味にどんな影響を与えるかという、素材との相性についての知識です。
それと同じように、ラケットの素材やスペックなどについて詳しい知識を持っていても、プレーパフォーマンスが上がるラケットを選ぶことはできません。
二つのものの相性を考える際には、片方の知識だけでは役に立たないわけです。
多くのプレイヤーは、ラケットのカタログを見たり、ネットで情報を集めたり、仲間から話を聞いたりと、さまざまな方法でラケットについて知ろうと試みますが、こうした観点から言えば、自分に合うラケットを見つけるためには、そのような方法はあまり役には立たないわけです。
調味料をそのまま食べても美味しくないのと同じように、テニスラケットという、カーボンのフレームにストリングを張っただけのシンプルな道具に、良いショットを打つような複雑な機能などないのです。
組み合わせて味見をするのが一番
素材に合う調味料を見つけ出すには、あれこれ考えていても始まりません。実際に両方を合わせてみて味見をするのが一番です。
プレイヤーに合うラケットを見つけ出す場合も同じで、理屈で考えていても答えは出ないので、コート上で実際に打ってみることが必要です。
プレイヤー以外の味見役が必要
ただ、プレイヤーとラケットの組み合わせが良い状態になっているかどうかについて、プレイヤー自身が判断を下すのは容易ではありません。プレーに集中しているために、自分の動きについて客観的な判断がしにくいのです。
そのため、良い状態になっているかどうかを第三者に見てもらう必要があります。素材自身は自分が美味しくなったかどうか判断できないので、味見役が必要ということです。
ですから、ラケットの試打をする際は、その時のプレー状態を見てくれる人を準備することが必要です。
それは、コーチでなくても、普段一緒にプレーしている人でもかまいません。見てくれる人が居ない場合は、打ち合ってくれている相手に聞くと良いでしょう。
その際に、素材自身、つまり打っているプレイヤーが何を感じたかは、あまり重要な情報ではないと考えたほうが最終的な間違いが少ないようです。
チェックポイント
第三者に見てもらう場合の着眼点は以下の3つです。
1.打球に勢いが出てコントロール精度が向上するか
2.ムダな力みが減ってリラックスしているか
3.バタバタせずに少し余裕が生まれるか
2と3については簡単に言えば、「少しうまくなったように見えるかどうか」ということです。
美味しいラケットを探そうとするけれど
多くのプレイヤーは、ラケットを持ち替えることで自分の動きが変化するなどとは思っていません。そのため、自分という素材は変わらないから、美味しいものをトッピングすれば良いと考えて、美味しそうなラケットを探すのではないでしょうか。
でも、ラケットの性能による多少のプラスアルファなどに期待するより、自分自身の動きが良くなるほうがプレーの改善効果はずっと大きいはずです。
良いラケットを探そうとするとなかなか出口は見つけにくいのですが、ラケットはあくまで脇役だと考えて、自分という主役を最大限に生かす脇役を探すという方向でラケットを考えてみてはいかがでしょうか。
美味しいラケットを探すのではなく、プレイヤーが一番美味しくなるラケットを探すことが大切です。