合わないラケットの自覚症状
テニスラケットが合わないときの
意外な自覚症状
今使っているラケットが自分に合っているかどうかについて、正確に判断できる方はとても少ないようです。
ここでは、合わないラケットによって引き起こされるいろいろな症状について書かせていただきますので、それに基づいてご自身で正しい判断ができるようになっていただければ幸いです。
TENNIS-ONEでは、「ラケットドック」というイベントで、これまで7,000名以上の方を対象に「ラケットフィッティング」を実施してきましたが、ご自分のラケットが合っていたケースはほとんどありません。
使い慣れた自分のラケットより、ラケットドックで用意された初対面のラケットのほうが、プレーが良くなったのです。
合わないラケットを、そうとは知らずに使い続けてきたのは、自分のラケットには問題がないと考えていたからであり、ということは、ほとんどのプレイヤーは、ラケットのせいで起きていることを自分のせいだと考えているわけです。
ラケットが合わないときの自覚症状
ご自分のプレー上の問題点は自覚していても、それをラケットのせいにするのは無責任だと多くの人が考えているようです。
治そうとしてもうまく行かないときに頭に浮かぶのは次のようなフレーズです。
練習不足
自分の技術が未熟
自分の悪いクセ
運動神経が悪い
テニスの才能がない
でも、プレー上で以下のような自覚症状がある場合、自分のせいだとは思わずに、「うまく行かないのはラケットのせいかもしれない!?」と、頭の片隅で疑ってみても良いでしょう。
1.打つときに、つい力んでしまう
2.力を入れなければ強いショットが打てないと思い込んでいる
3.ショートラリーが苦手
4.球出しがヘタで狙ったところにボールを送れない
5.スピンをかけるのがヘタで練習してもダメ
6.次のボールへのスタートが遅い
7.打球の深さが安定しない8.時々直線的なアウトが出る
9.ボレーで振り過ぎてしまうことが多くコンパクトに打てない
10.自分には強いショットは打てないと思い込んでいる
11.力を入れて打っている割に強打にならず簡単に打ち返される
12.打球をコントロールしようとすると気持ち良く振り抜けない
13.アウトが多いのでストリングを硬く張っている
14.試合になると腕が縮んでしまう
以下は、これらの症状についての簡単な解説です。
1.打つときについ力んでしまう
・・・・・力を抜くように指導されてもどうしても力が入ってしまう
打つときに、「どうしても力が入ってしまう」という場合は、打ち負けやすいラケットが原因だと思われます。
打ち負けやすいラケットは打球衝撃が強く、相手の打球に押される感じがするので、それに対抗するために反射的に力が入ります。
力が入るのは、衝撃が予想されるときに身体の自然な反射として起こる反応なので、それを意識的にやめて、リラックスして振るのは無理でしょう。
打ち負けやすくて打球衝撃が強いのはラケットが合わないせいなので、脱力しようと努力しても、打球の勢いがなくなるだけです。
2.力を入れなければ強いショットが打てないと思い込んでいる
・・・・・ハードヒットには強い筋力が必要だと考えている
大リーガーのホームランバッターが「ホームランはパワーではない、スイングスピードで打つんだ」と言っています。
打つときに力を入れるためには、それに見合う手応えが必要です。
でも、バッティングで手応えがあったら、ボールの飛びはボテボテです。
野球以外でも、ゴルフなどでもそうですし、道具を使わないサッカーでも同じです。
日本代表の遠藤選手の直線的なロングシュートがゴールネットに突き刺さったとき、「蹴った感触がなかった」というコメントでした。
相手ボクサーを一発で沈めたKOパンチには「まるっきり手応えがなかった」という勝者のコメントが付きます。
手応えをしっかり感じて力を入れて打とうとするのは、合わないラケットを使っているテニスプレイヤーの特徴です。
3.ショートラリーが苦手
・・・・・短く打つのが難しくてうまくコントロールできない
強い打球の打ち合いでは別に問題はないのですが、弱く短く打とうとすると、力加減が難しく感じて、打球の深さも定まらないという症状がある場合は、合わないラケットによるものです。
強く打ち続けるだけの一本調子では、相手が慣れてしまう上に、こちらの体力も続きません。
ラケット側の問題点としてはいろいろなケースがあるのですが、1.の「打つときについ力んでしまう」という症状とセットで発生するケースがあります。
別のケースでは、ラケットのスイングウェイトが重すぎる場合も、このような症状が出ます。
4.球出しがヘタで狙ったところにボールを送れない
・・・・・安定した球出しができずボールが散ってしまう
手に持ったボールを打つのは、最も簡単なショットだと言えますが、そのときに打球が安定せず、着地点がバラバラで、ちっとも相手の練習にならないというケースです。
ボールを打つときの力加減が分かりにくいので、試行錯誤の繰り返しになるために安定しないのですが、力加減でボールの飛びをコントロールしようとすること自体が合わないラケットの症状です。
5.スピンをかけるのがヘタで練習してもダメ
・・・・・回転をかけると打球が短くなってしまう
持ち球がフラット系である場合、直線的なアウトが出たりすると、もっとスピンをかけたいと思うのですが、フラット系の打ち方に固まってしまった原因にはラケットが含まれていることが多く、そのままでスピン系のショットに移行するのは無理なことが多いようです。
6.次のボールへのスタートが遅い
・・・・・動き出しが遅いのでいつも余裕がない
遠いボールに届かなかったり、相手の打球に遅れ気味でいつもバタバタしていたりすると、「自分は足が遅い」と思いがちですが、実はそうではなく、単にスタートが遅いだけというケースが少なくありません。
そして、スタートが遅いのは、その前のショットを打った後にムダに足を踏ん張っているからで、そうなってしまうのは、ラケットのせいであることが少なくありません。
7.打球の深さが安定しない
・・・・・ネットとアウトが交互に出やすい
アウトが出たときに、それを防ごうとするとネットしたり、短くなったりすることが多く、ネットとアウトが交互に出て、適切な深さに打ち続けるのがとても難しく感じるというのは、典型的な合わないラケットの症状です。
ミスが出ると、それを防ぎたいので、打ち方を修正しようとして試行錯誤が始まってしまうのですが、そうすると余計に安定しなくなります。
8.時々直線的なアウトが出る
・・・・・すっぽ抜けたようなアウトが急に出る
とっさのショットでアウトが出るのは、ラケットが飛び過ぎであることが多いのですが、しっかり構えて打っているときにアウトが出るのは、ラケットの飛びが不足している場合に多いようです。
ラケットのせいで、「アウトするような打ち方」になってしまったということです。
9.ボレーで振り過ぎてしまうことが多くコンパクトに打てない
・・・・・大振りを注意されるが治らない
コンパクトに振るのがボレーの常識ですが、どうしても大振りになってしまうのは、ラケットが打ち負けやすかったり、飛ばなかったりするせいです。
コンパクトなスイングでは打球の深さが出ないために自然と大振りになってしまうので、そのラケットのままでスイングを小さくしようとしても無理でしょう。
10.自分には強いショットは打てないと思い込んでいる
・・・・・あまり力がないので強打はできないと思っている
打球のスピードや勢いは、勝つための重要な要素ですが、腕力や握力がないからと、初めからあきらめてしまうことがあります。
これも、2.の「力を入れなければ強いショットが打てないと思い込んでいる」と同じ症状で、ラケットが合わないと力が必要になります。
力がなければ強いショットが打てないのであれば、ジュニア選手の強打の説明ができません。
11.力を入れて打っている割に強打にならず簡単に打ち返される
・・・・・入れている力が打球にうまく伝わっていない感じがする
力を入れて打っても簡単に打ち返されるのは、打球が失速して相手が打ちやすいボールになっているせいです。
そうなってしまうのは、プレイヤーのスイングパワーがうまく伝わっていないからです。
そして、うまく伝わらないのは、ラケットとプレイヤーの相性が悪いからです。
それ以前に、力を入れて打とうとすること自体が、合わないラケットの症状なのですが。
12.打球をコントロールしようとすると気持ち良く振り抜けない
・・・・・スイングがギクシャクしてスルッと振り抜けない
インパクトでボールがストリング面と接しているのは千分の数秒しかないので、そんな短い間にスイングを調整して飛びをコントロールしようとするのは最初から無理なのですが、そんなことをしてしまうのは、気ままに振り抜くと
打球がどこに飛んでいくか分からないという不安感があるせいです。
13.アウトが多いのでストリングを硬く張っている
・・・・・でも結果的にアウトは減っていない気がする
アウトが増えるとストリングを硬く張る方が多いのですが、その結果、アウトが減ったという方は少ないのではないでしょうか。
仮に、ストリングを硬く張ることでアウトを減らすことに成功したケースがあっても、そのときには、打球がかなり失速しているのではないでしょうか。
アウトが多い時点で、ラケットが合っていないと判断したほうが話が早いでしょう。
14.試合になると腕が縮んでしまう
・・・・・試合で緊張すると弱くしか打てなくなってしまう
合わないラケットでは、プレイヤーの力加減とボールの飛びがリンクせず、思いがけない飛びが出ることがあります。
緊張する試合でスイングが萎縮してしまうのは、プレー中に、自分のショットが予想外の結果になることがある、ということを本人が自覚しているせいです。
予想外のことが起こりやすい状況では、自由気ままに振ることができなくなって、安全性優先の萎縮したスイングになるのが普通です。
自分の身体やラケットが信用できない状態と言って良いでしょう。
ラケットのせいで起こることはこれ以外にもたくさんありますが、プレー上の問題点の原因を自分とラケットとに正確に区分けすることができれば、取り組むべき課題がかなり整理されるはずです。
何より、ラケットの弊害を排除してしまえば、合わないラケットとの格闘で無駄な練習時間を積み重ねることが防げます。