「ラケット=タイヤ」論!?
テニスラケットタイヤ論!?
弊害がない状態がベスト
別の記事で「ラケット調味料論」というのを書きましたが、今回は例えを変えて「ラケットタイヤ論」です。
テニスのプレイヤーを車に例えれば、ラケットは車のタイヤのようなものだと思います。
車の場合、その性能に合ったタイヤが取り付けられていれば良いのですが、サイズの合わないものが付いていたり、タイヤの状態が良くなかったりすると、車の性能が十分に発揮されなかったり、事故の原因になったりします。
テニスプレイヤーの場合も、合わないラケットではプレー能力が低下したり、故障の原因になったりします。
複雑な機能は持っていない
タイヤはホイールとゴムでできたシンプルな構造で、それ自体では複雑な機能は持っていないのですが、車と路面の間にあって車の性能を路面に伝える働きをしているため、車の性能を最終的に左右する重要な役割を担っています。
タイヤがダメな場合は、ドライバーの腕と車の性能がいくら良くても、それらが十分に発揮できず、極端な場合は全く走らないということもあります。F1ドライバーでも、パンクしたタイヤでは走れないわけです。
カーボンフレームにストリングを張っただけというシンプルな構造のテニスラケットも、それ自体で良いショットを打つような高度な機能は持っていないのですが、プレイヤーとボールの間に位置してプレイヤーの運動をボールに伝える働きをしているので、プレー能力を左右する重要な役割を担っています。
ラケットが合わなければ、プレイヤーの能力が高くてもその能力がうまく発揮されずに、ミスが増えたり上達が邪魔されたりということが起こります。
パワーの出口に位置する
タイヤとラケットはどちらも高度な機能は持っていない代わりに、車やプレイヤーという本体のパワーの出口に位置するために、適切な選択がなされないと、本体の性能を大きくスポイルするという点でよく似ています。
カーブをきれいに曲がれるタイヤというものはなく、カーブに合わせてハンドルを切るのはドライバーの役目ですので、スムーズにカーブを曲がれるかどうかはドライバーの腕次第ですが、でも、タイヤの状態が悪かったり、サイズが合わなかったりすれば、腕の良いドライバーでもカーブが曲がりにくくなります。
カーブを曲がりやすいタイヤはなくても、カーブを曲がりにくいタイヤはあるわけです。
スピンのかけやすいラケットやストリングを探す方は多いのですが、ラケットを振って打球に回転をかけるのはプレイヤーの役目です。
その役目をラケットに期待しても無理なのですが、でも、ストリングの状態が悪かったり、ラケットの性能がプレイヤーに合っていなかったりすれば、間違いなくスピンはかかりにくくなります。
スピン性能の高いラケットはないのですが、スピンのかけにくいラケットはたくさんあるわけです。
燃費が悪くなる
タイヤの選択が不適切だったり、空気圧が低すぎたりすると車の燃費が悪くなります。
ラケットの選択が不適切な場合も、プレイヤーに余計な負担がかかるため、運動効率が下がって、体力の消耗が早くなります。
合わないラケットでがんばって打っているとすぐに疲れてしまうのです。
120%はない
ただ、最適なタイヤを選んでも、最高時速が速くなるなど、車自体の性能がアップすることはありません。
それと同じように、最適なラケットを選んでも、プレイヤーの能力がアップすることはありません。
能力が100%発揮される状態がベストであってそれ以上、120%はないということです。
弊害の排除には手間と時間がかからない
「合うラケットを使うとそれまでの弊害がなくなる」という話を聞くと、「何だそれだけか」とつまらない気がする方も多くいるでしょう。
ですが、受けている弊害が大きければ大きいほど改善幅も大きくなります。
そして、実際にはとても多くのプレイヤーがラケットの弊害を抱え込みながら、そうとは知らずにプレーしているというのが現状ですので、それが排除されれば多くの方のプレーがもっと快適になるはずです。
さらに、そうした効果を得るために必要なのはラケットを換えるだけですので、特別な練習や努力が必要ないのです。
自分では分からない
ラケットから受けている弊害に自分で簡単に気付くことができれば、多くのプレイヤーが合わないラケットを使い続けることはないでしょう。
でも残念ながら、テニスというスポーツの特性上、自分のプレーを客観視することがとても難しいので、ラケットの弊害に気付かずに使い続けているケースがほとんどです。
そして、例え合わないラケットで大きな負担を背負っていても、そのラケットを使っている本人は、それが普通だと思っているので、特に不満や問題点を感じません。
合わないラケットを平気で使い続ける理由は、「特に不都合を感じないから」です。
「余計な負担」は、それをずっと背負っている本人は、慣れていて当たり前だと思っているので、それが無くなったときにしか、その存在を自覚することがないのです。
ですから、ラケット選びには他人の目が不可欠なのです。
「メリット付加型」ではなく「デメリット排除型」
「プレイヤーをアシストしてくれる良いラケット」があるはずだと多くの人は考えていますが、その方向でラケットを探しても、その先には迷路が待っているでしょう。
「自分の力が100%発揮できるラケット」を見つ出すことが最終目的地なのです。
この二つのラケット探しの方向性にはそれほど大きな違いがないように見えますが、実際の探し方に大きな違いがあります。
「プラスアルファを探すラケット選び」と「マイナス要因の排除を目指すラケット選び」の違いです。
何かを装備するというラケット選びではなく、余計な重荷を取り外すというラケット選びです。
「メリット付加型」ではなく「デメリット排除型」なのです。
「プラスアルファを探す」or「マイナス要因を排除する」
「プラスアルファを探すラケット選び」ではプレイヤー自身をチェックせずに、幸せの青い鳥を探すように「何か良いラケットはないか」と探し回るのですが、そこからの出口を見つけるのは難しいでしょう。
スピンのかけやすいラケットやストリングを探す方の多くは、ラケットやストリング・セッティングが合っていないケースが多く、確かに、その状態ではスピンはかけにくいのですが、だからといって、「スピン性能の高いラケット」を探しても解決にはつながらないでしょう。
解決策は「スピン性能の高いラケット」 にあるのではなく、「自分に合ったラケット選択と適切なストリング・セッティング」にあるわけです。
「マイナス要因の排除を目指すラケット選び」では現状のプレーを見ることからスタートします。
車のようにその性能が数値化されていれば、タイヤの選択はカタログを見れば済むのですが、テニスプレイヤーの場合は、それぞれの性能や特性が数値化されていませんので、実際に動きを見て性能や特性を把握することから始めることが必要です。
ラケットの足かせを外して、コート上を軽快に飛び回るためには、「何か良いラケット」を探すのではなく「自分に合ったラケット」を探すことが大切なのです。